Shinnosuke × Takki ミネアポリス・サウンド対談 ~①ジャム&ルイスの衝撃~


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ーーーこんにちは、紫大学編集部です。今日はミュージシャンとして大活躍されているShinnosukeさんと、紫大学のTakkiさんこと二重作さんの対談をお送りしたいと思います。お二方、どうぞよろしくお願いします。まず、お二人の自己紹介と出逢いのきっかけからお伺いします。まずはTakkiさんからお願いします。

 

Takki  こんにちは.Takkiです。格闘技ドクターとして、診療や格闘技の安全性について活動しながら、海外ミュージシャンの来日時のツアードクターをやっています。Shinnosukeさんとは、プリンスファムの共通の知人からのご紹介でお会いさせていただきまして。初めてだったのに、お互いの音楽のヒストリーや楽曲の好みまで様々な共通点があったことからめちゃくちゃ話が弾みました!友人からも、「素敵な人だからぜひ紹介したい」との声かけだったんですが、その言葉通りで。今回、プロの世界で生きるミュージシャンとして、ご自身の世界の表現者として、またミネアポリスサウンドを愛する仲間として、いろいろ学ばせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

Shinnosuke  どうぞ宜しくお願いいたします。僕はSOUL’d OUTという3人組で2003年にSONYからデビューして以来、現在は色々なユニット活動や個人活動しつつ他アーティストにも楽曲提供してます。プリンスと同じ...なんて大それた事は言えませんが心の中では目指すところそういったイメージを持ってマルチな活動を、という感じです。

 

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 Takkiさんが説明してくださった通り共通の知人を介してお会いさせていただいたのですが、物凄くプリンス愛が深い方で驚きました!Takkiさんたちのプリンスのイベントに遊びに行かせていただいたのですが、他の同志の方々も皆さんとてもマニアックで変態さんばかりなので嬉しかったです(笑)

 

 

Takki  いやー、参りましたね。ずっとプリンスファムをやっていますと、変態って誉め言葉に聴こえてきてしまうんですよ(笑)

 

Shinnosuke    僕も最大級の褒め言葉として「変態」って使ってます(笑)ミュージシャンとか絵画とかアートやってる人って変態って褒め言葉でしかないですよねー。

 

Takki たしかに。素敵な変態さんばかりです(笑)それで世の中に影響を与えてるのがみなさん凄いです。Shinnosukeさんとお会いした時も、渋谷のクラブイベントだったのですが、「大音量でプリンスが聴ける、踊れる」それ以外は何もなし、というイベントなのに、岐阜からくるは、伊豆大島からくるは、で、変態さん大集合でした(笑)でも、そんな空気の中で、純粋にひとりの音楽好きとして音に浸っていらっしゃる様子がとても印象的でした。問題は・・・僕が家に帰ってからです。

 

ーーー家に帰ってから?何が問題だったんですか?

 

Takki Shinnosukeさん、およびSOUL’d OUTの音を検索して聴いたんです。「ひょえー、めっちゃクールでカッコいいじゃないか!」とビビり入りましたね。プロに向かってこんなこと言ったら絶対失礼なんですけど、なんていうんでしょうか、凄く洋楽的というか、音楽的というか、クラストワークやヒューマンリーグといったヨーロッパ的なフィーリングと、CHICやジャム&ルイス、プリンス的な洗練されたサウンド、そしてヒップホップのストリート感覚が、凄くナチュラルに音楽の中にあるような印象を受けたんです!

 

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 もちろん、僕はニワカもいいところなので、ずっとフォローされてる支持者の方からしたら「全然違うよ」と怒られちゃうかも知れないけど、でも少なくとも僕はそう感じたんです。

 

Shinnosuke  調べてくださったんですか!?!? 知らなかった!!なんかスミマセン…ありがとうございます!SOUL’d OUT はメンバー2人もかなりの変態だったのでそこでのケミストリーが面白いユニットでした。僕だけじゃ生み出せない音楽性でしたね。

 

 

Takki わぁ、そのあたりのヒストリー、是非伺ってみたいです。

 

Shinnosuke 最初は日本の歌番組を好きで観てた子供だったので普通に歌謡曲や邦楽から入ったんです。と同時にファミコンが発売した幼少期だったのでドラクエとかファイナルファンタジーというRPGにハマって。そこでの音楽/サントラにもハマって小学校のブラスバンドに入ったんですよ。

 

Takki RPGからブラスバンド

 

Shinnosuke そうなんです。ピアノとか習ってなかったのでそれまで音楽教育は全く受けてなかったんですけど、なんか幼心にエンターテインメントを感じたんですよね。で、ほんとはトランペットとかサックスとかのメロディー楽器をやりたかったんですけど、背が高い(=腕が長い)からという理由だけでトロンボーンやる事になって(笑)。当時はメロディーを演奏できないからつまんないとかも感じてたんですけど、でも今振り返るとそれでアンサンブルの妙を知った、と。アレンジのおもしろさに気づいた時期だったんだと思います。

 小・中学生の頃にマイケル・ジャクソンとかマドンナとか一緒にプリンスも知ったんですけど、やっぱりというか子供なのでそんなに良いとは感じなかったんです(笑)特にプリンスは見た目がアレでしょ(笑)怖い、変な人だ…と。マイケルはとんねるずさんのネタ曲のイメージ強かったし(笑)

 

 

 

Takki たしかに(笑)

 

Shinnosuke そこからはグラフィックデザイナーだった父の影響で美大へ進学したいと思うようになって絵ばっかり描いてたんですけど、でも先輩に連れられてしょっちゅうディスクユニオンとか行くわけですよ(笑)そこで色んなジャンルの洋楽に出会って。Remix とか Acappella を求めてマキシシングルとかたくさん買ったなぁ。これもリアルタイムではなく後追いなんですけど、ジャネット・ジャクソン の「Rhythm Nation」というモンスターアルバムに出会って衝撃を受けるわけです。で、ミネアポリスサウンドというものを意識しだすんですけど、そこからですね。「プリンス、やっぱカッコイイじゃん!」と。「ジャム&ルイス を使ってただけあるじゃん!」と。ようやく見直したという(笑)

 

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Takki あははは(笑)あるあるかも(笑)

 

Shinnosuke  SOUL’d OUT デビュー前は白金にあった老舗のディスコ「ダンステリア」でアルバイトしながらスタジオで色々試行錯誤してたんです。なのでダンス・クラシックスとかソウル、ファンクの勉強はダンステリア時代でかなり培われましたね。そこは ジェームス・ブラウンとか テンプテーションズとかがオーナーとかDJの友達なので来日公演の際には遊びに来てたというハコなんですよ。僕はお会いした事なかったですけど。そこでかかってる曲は70年代の曲が中心なので プリンス はほとんどかからなかったんですけど、お店の女性スタッフに熱狂的な プリンス マニアがいて、色々話を聞いたりしてました。

 だからTakkiさんが感じてくださった「色々なジャンル感」って僕の中で凄く大事で。ロックだけでもなくソウルだけでもなく。プリンスもそうじゃないですか。全てを飲み込む音楽モンスターと言うか。

 

Takki 音楽モンスター!

 

Shinnosuke そうなんです。もっと言うともちろん J-Pop とかもそうだと思うんですよ。洋楽の美味しいところを上手く日本流に消化(昇華)した形が日本のポップスなので。必然的に後追いになってはしまうんですけどね。日本語で歌うし、音楽/曲に対しての考え方が違うから結局洋楽とは全然違っちゃいますしね。僕はそういう J-Pop も大好きな上にディスコで次々と色々な曲がかかるミックス感覚というか、今で言うとプレイリスト感みたいなそういうグチャグチャなのが好きなのでなんでもやっちゃうんですよね。

 僕はChic も Duran Duran も Guy も Hip-Hop も映画音楽も Guns’n Roses も Deep Purple も全部大好き。プリンスも黒人なのにロックしか聞かないような土地で生まれ育ったからこその音楽性ですよね。彼の場合はそこに性的なコンプレックスとか様々な精神性が落とし込まれているとも思いますし。特に彼は自分で歌詞を書いて歌うわけですから。僕はそんなに歌詞書かないし自分では歌わないのでどうしてもサウンドプロデューサー的な立ち位置での創作活動になります。

 

 

Takki なるほど~。だからShinnosukeさんの音楽に多様性を感じたんですね。僕もドラクエのBGMとか好きで、「なんか、スティングのラシアンズに似てねーか?」とか弟と話しながらですね。キャラの名前で句読点無しの4文字しか打てないから、プリンスを諦めて、カミール(プリンスの別人格)にしたりして。

 

Shinnosuke あははは(笑)カミール、最高(笑)歩くのちょっとだけ早そう(笑)

 

Takki  ハイヒールなのに(笑)でも、RPGにはまって、普通はゲームとか、クリエイター系に行く人が多いのに、ブラスバンドに入って、トロンボーン!!!たしかにモンスター倒す目的なら、サックスよりトロンボーンのほうが武器として使えそうですが(笑)

 

Shinnosuke 効きそうですね(笑)

 

Takki でもでも、金管楽器の下地があってのシンセサイザーってところが、なんかすごく納得いきました。P-FUNKトロンボーンでデビューして、プリンスのバンドにもいたグレッグ・ボイヤーのトロンボーンを聴くと、なんか「ここぞ!」という時にトロンボーンが打楽器的に鳴ってたり、リズムの間にガツンとなったりすることがあって・・・。Shinnosukeさんのシンセサイザーにもきっとフィーリングとしてあるのかな、なんてお話を伺っていて感じたんです。

  あと、いろんなジャンルのミクスチャー感覚、しかも遅れてきて、というのは、もろにミネアポリスサウンドの特徴に共通する部分ではないですか?NYやLAといった都会の音楽発信地から遠いミネアポリスは、MTV出現以前、つまりラジオメインの時代は、最新の音楽がずいぶん遅れて到着したんだそうです。だから、逆に土地柄として流行を追えなかった。オーストラリアの有袋類じゃないけど、ちょっと独特の進化を遂げたところはあるのかも知れないですよね。Shinnosukeさんからジャネット・ジャクソンの「Rhythm Nation」が衝撃だったというお話がでましたが、是非その衝撃について詳しく教えてください!

 

Shinnosuke 「Rhythm Nation」はですね、とにかくもう「音の大洪水!!」という感じでスーパー打ちのめされたんですよ。ヘッドフォンで聴くのも好きだったので更に凄くて。ユーロビートとかテクノとかも聴いてた時期だったんですけどファンクはまだそこまで聴いてなくて、ワンコードで押し通してるのにここまで彩り豊かになるってことはアレンジャーが相当凄いぞ!と。それが ジャム&ルイス だったんですね。

 

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 僕はシンセサイザーを高校生の頃に買ったんですけど、「Rhythm Nation」を聴いてるとなんかそういう質感じゃないんですよ。僕が今まで知ってた質感ではない。後から知るんですけど、それはミックスエンジニアのSteve Hodge によるところが大きいんだ、とか使ってるシンセは ENSONIQ系が多いからこういうアメリカンな感じの音なんだ、とか打ち込みなんだけどフレーズはほとんど手弾き(←ここ重要!)なんだ、とかサンプリングの使い方が凄すぎる!とか。もうね、「スライム相手にイオナズンを100連発したくらいの攻撃力」を感じたんですよ(笑)

 

 

 

Takki  あははは、凄まじい破壊力!スライムに同情(笑)

 

Shinnosuke  ですよね(笑)当時はシンセやリズムマシンが爆発的なブームというかパワーを持ってた時代なので、そういった打ち込み系の音楽を好きで色々聴いてたんですけど、圧倒的なんですよね。凄く音楽的であり、人間的であり且つSFのような未来的なアンドロイド感もあったり。で、アルバム全体がコンセプトアルバムなのでインタールードが沢山散りばめられていて。この演出にも参りました。完全にひれ伏しましたよ。映画的というかゲーム的というか。

 

Takki なるほどー!映画的、ゲーム的。

 

Shinnosuke そうなんですよ。表題曲「Rhythm Nation」はもちろんシンセやリズムマシン、サンプリングの嵐なので凄く硬質的なテクスチャーなんですけど、実は スライ& ザ・ファミリー・ストーンの「Thank You」という曲がサンプリングされて使われてるんです。ベースの所とか。こういう人間的なフレーズサンプリングが薄く下敷きされてるの最初は分からなかったんですよ。全部が打ち込みだと思ってて。CDブックレットのクレジットにもこのサンプリングは載ってなかったので全く気づかず。

 

 

 

 この後 、ジャム&ルイスはこういった スライや JBなどのファンクネタを好んでサンプリングしてトラックメイキングしていく事になるんですけど、これもかなりの衝撃で勉強になったんです。タンバリンとかスネアが何種類も聴こえるんだけど、「打ち込みでやっても同じようにならないなぁ。どうやってるんだろ?」ってずっと分からなかった答えがそれで。フレーズサンプリングなんですよね。Hip-Hop のトラックメイキングのような感じ。

 

Takki おおお、実はヒップホップ的であった、と。

 

Shinnosuke  そうなんです。なので僕はこういったサンプリングのテクスチャーと打ち込みのシンセと、さらに人間が弾いたギターやストリングスなどの楽器達が上手くまとまってるサウンドが好きになっていったんです。でね、基本的にキーボーディストではあるんですけど一番好きなのはシンセアレンジではなくてストリングスやホーンセクションのアレンジなんです。元々トロンボーンやってたというのもここに繋がってるんだと思います。でもね、Jam&Lewis がプロデュースした作品て沢山ありますが、生のホーンセクションを使ってるのそんなに多くないんですよ。

 

Takki  おおお、意識したことなかったですが、言われてみれば!

 

Shinnosuke  生のストリングスはバラードとかだと結構ありますけどね。これは僕の勝手な想像ですけど、ミネアポリスサウンドの特徴ってやっぱりシンセブラスだと思うので、そういうところからそんなに生のホーンセクションを使ってないのかもな、なんて思ったり。Jazz にしろファンクにしろブラックミュージックなんて生のホーンセクションが沢山入ってるから使えば良いとも思うんですけどね。そうじゃない。多分彼らが生まれ育った土地がもっと南の方とかだったらシンセブラスにこだわってなかったかもだし。 わかんないんですけど。

 

 (パート2へ)

 

Shinnosuke  プロフィール

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 Song Writing (Compose / Lyric & Words) , Arrangement , Produce , Remix

Sony/SME Records より3人組ユニット 「SOUL'd OUT」 としてメジャーデビュー。 Trackmaster として楽曲の作曲・編曲を担当し、2003~2014年まで活動。buzz★Vibes、boyz mart、Disco Hardayz  Band など現在も様々なユニット・アーティスト活動と平行して他アーティストへの楽曲提供やテレビドラマ/アニメの BGM 制作も行っている。

 

Twitter @Shinnosyke_Syn

Instagramshinscapade 

 

Shinnosuke が自分の思い出と共に「Pop」という観点から選んだ大好きな曲を好き勝手にかける音楽番組『Pop Life』今春から各局で放送中!番組タイトルはもちろんPrinceの楽曲から拝借。

FM京都丹波 毎週土曜日 15:30〜

http://fukuchiyama.fm-tanba.jp


DARAZ FM 毎週土曜日 24:00〜(リスラジで聴けます)

http://darazfm.com


八王子FM 毎週日曜日 24:30〜(リスラジで聴けます)

https://775fm.com


FMふらの 毎週水曜日 16:30〜

http://radio.furano.ne.jp


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