プリンス 7 つの質問  10 R. Ochiai

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1.あなた自身を紹介してください。

 

  R.Ochiai 日本人 バイオリン講師です。音大在学中に弟子入りしたポップス・バイオリニストの下で、裏方業に興味を持つようになり、スタッフとして音楽業界に入り、バンド系・R&B,Hiphop系のアーティストマネージャーになりました。その後、ストリングスアレンジや演奏活動をしている中、先輩の薦めで音楽教室の講師に。家業の営業も務めるWワーカーです。趣味は仕事、映画・映画音楽鑑賞、宇宙全般、軍事から香水まで主にインドア系で超多趣味だと思います。

 

2. あなたはどうやってプリンスファムになったのですか?

 
 高校生の時、地元の中古レコード屋に飾られていた「Lovesexy」や雑誌のレコ評で「Graffiti Bridge」を見かけたのが最初の出会いです。なんだかすごいセンスだなぁと思いつつ、自分が子供の頃からクラシックの英才教育を受けていたので、"1000種類の楽器が弾けて、多重録音で全て1人で演奏しているマルチミュージシャン"というプロフィールが気になっていたが、音を聴くまでには至らずでした。

 きっかけは、深夜テレビ放送した「Diamonds & Pearls」のライヴを録画したものを観た時でした。当時は、コンクールでの酷評や音大受験失敗で、音楽を続けるべきか、自分の能力に絶望して最も苦しんでいた時期で、何気なくどんな感じなんだろうと録画して観たPrinceのパフォーマンスに衝撃を受けたんです。

 

 

 それまで観てきたクラシックの演奏家のコンサートでは感じた事がなかった衝撃で、画面の中のPrinceは全てが完璧で洗練されていて、「何を悩んでるの?音楽は自由なんだよ」って言われているように感じて、衝撃と感動で泣いてしまいました。音楽で心が揺さぶられたのは、あれが初めてでした。

 そして、世界には作曲・編曲・演奏だけじゃなく、全てをこなす超人がいる、自分は自分の能力なりに音楽と生きていけばいいんだと思えて救われたんです。クラシックやってる人なのに、プリンスの何がそんなにいいの?とよく聞かれます。その答えは、プリンスが亡くなった時にU2のボノが出したコメントそのものです。

 "モーツァルトには会ったことがない。デューク・エリントンチャーリー・パーカー、エルヴィスにも。でもプリンスに出会った"

  モーツァルトが音楽の天才の喩えとしてプリンスにも使われますが、よく知られているように、モーツァルトは幼少期から恵まれた音楽環境下で活動をしていて、圧倒的な神童としてヨーロッパ中に認められていたので、当時の体制と闘う必要もなく、恐らくそんな事を考えたこともなく自由に活動することができました。
 伝えられている彼の生き方は、プリンスとは正反対の享楽的なもので、その結果周囲から人が去り、晩年非常に困窮した生活を送って亡くなりました。残念ながらモーツァルトは、作曲家・演奏家としての才能以外は、プリンスのように全てにおいて一流ではありませんでした。だから、一般的にプリンスはモーツァルトのようだ!と比喩されると、いや次元が違う、それ以上だとわたしは感じます。モーツァルトが現代に生きていてもプリンスにはなれなかったでしょう。
 

3 .あなたの最も記憶に残る「紫の経験」は何ですか? 


・プリンスを教授してくれた友人
お互いの好きな曲の傾向が似ていて、ブートからPrinceのルーツ音楽に至るまで教えてくれた先生のような存在の方がいました。当時の私が知らなかっただけで、ある世界の超有名人です。そのころ定期的に送られてきたり、手渡されたオリジナルのミックステープは今も大切な宝物です。


・プリンスの子供の頃の友人
2016年11月に行ったミネアポリス の教会で、中を見学させてほしいと交渉していたら、翌日のライブの準備に来ていた彼と遭遇しました。ペイズリー・パーク・スタジオの帰りで、シンボルマークだらけの私に気付いた彼が、海外から来たプリンスファムだから、と交渉してくれたら、教会側もあっさり案内してくれました。彼はプリンスとは通学仲間であり、彼の自宅にもよく遊びに来ていたそう。彼もあるグループのミュージシャンで、翌年の来日公演に行って以来、いろんな思い出話やミネアポリス の音楽事情を聞かせてくれる大切な友人となりました。

 

・プリンス本人の品を譲り受けた事。
形のあるなかではいちばんの宝物ですね。

 

4. あなたのトップ3のソウル・ソング(重要曲)は何ですか?

 

Little Red Corvette
 歌詞の意味もまだよくわからなかった頃から、意味を理解した今に至るまでNo.1です。この曲の切なさが無条件にたまらなく好きですね。仲良くなる人は、この曲をNo.1に挙げる人が多いかも知れません。だからNo.1 Soul Songです。

 

 

Diamonds & Pearls
はまるきっかけの曲です。MVはどれだけヘビロテしたかわかりません。メロディーの美しさ、歌詞の世界観、この人の精神世界はどんな風なんだろうと、プリンスの内面に強く興味を持った曲です。

 

 

Gold
"All that glitters ain't Gold"(キラキラ光るものすべてが黄金ってわけじゃない)の部分は、物事を見る時の戒めにしています。形や見た目に捕われずに、本質を見極める事。似たような歌詞があるInto The Lightも、似たような意味で個人的に重要な曲ですね。

 

 

 

 

5. 素晴らしいアーティスト/ミュージシャンをプリンスが私たちに紹介しました。あなたのお気に入りは誰ですか?

 

スライ& ザ・ファミリー・ストーン
Diamonds & Pearlsから聴き始めたので、そこからのリアルタイムを聴きながら、過去も遡っていく中、ルーツとされる音楽に辿り着いた時、プリンス以外に好きで聴いていたスライやPファンク、オハイオ・プレイヤーズがプリンスの時間に存在していたのは、うれしかったし、だからPrinceの音が好きなんだと納得しました。自分が好きな音楽を再確認しているような気がしました。

 

 

6. プリンスの音楽は人生の教訓とメッセージでいっぱいでした。プリンスがあなたに与えた最も重要なものは何ですか?

 

"音楽は自由なんだよ"
質問2と重複しますが、クラシック音楽は、様々な守らなくてはいけない奏法・作法がある音楽の世界で、その中で道を見失いかけていた自分に、プリンスは光を与えてくれました。私の人生に音楽をどう活かすのか、そのために闘うことも時には必要だとも教えてくれたんです。音楽と共に生きる道を照らしてくれたから、今の自分があります。

 

7. 次世代にプリンスを紹介する方法は?

 

 まず動画や人気のあるコンテンツで、特定の楽曲が頻繁に使用されれば、音を耳に残すことが可能だと思います。そして大人たちが聴き続けて、語ることです。洋楽が好きな人は、周りの大人が聴いていた影響で好きになったという人が昔から多いですし、私がプリンスを聴いて話すので、親戚の子はプリンスの曲が、彼女が好きなアーティストにカバーされた時に、「すぐわかった!」と言ってきたことがあります。
 彼は様々なビジュアル・音楽性を持っていたから、対象にする時代・世代に適した面をアピールできたらいいと思います。長年のFamが思う感覚と、これから興味を持つ世代の感覚。情報を提供する側が、柔軟な感性を持ち続けていける事も大事かと思います。