食わず嫌い王子 07 古川 淳一/ボーカリスト・ボーカルトレーナー 

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食わず嫌い王子 ~あなたの殿下がここにいる!かも?~

ヨーロッパやアメリカでは「現代のモーツァルト」として高く評価されリスペクトされる一方、日本の一般層には「プリンス?誰それ?」状態。そんな時代に、究極のお節介企画、『食わす嫌い王子』。プリンスをあまり聴いていない方、存在自体知らない若い世代に、「殿下の音楽は届くのか?」実験的インタビューをここにお届けします。

07  古川 淳一さん/ボーカリスト・ボーカルトレーナー

古川 淳一 (@junichi225) | Twitter

 

ーーーこんにちは、紫大学大学です。この度はおせっかいな企画へのご参加をありがとうございます。まずは、古川さんの自己紹介をよろしくお願い申し上げます。

 

古川:古川淳一です。福岡県北九州市出身のボーカリストです。現在はおもに吉祥寺でボイストレーナーとして働いており、ボーカリストさんをはじめ様々な方のサポートをさせていただいております。

 

ーーー古川さんはボーカリストとして、またボイストレーナーとしてご活躍されているんですね。どのような経緯でその道にすすまれたのでしょうか?

 

古川:大学時代の出会いがキッカケです。地元にいる時は全く思いもしなかったのですが、大学で出会った人達に誘われて、ゴスペルや路上、クラブなど、様々な環境で人前で歌うことを気がついたら始めていました。やっていくうちに楽しくなっていってお仕事もいただけるようになっていったのですが、このままやってても良いものか…そもそも自分の才能で通用するのかどうか不安になったのもあり、ボイストレーニングスクールに入りました。

 そこで出会った恩師から「君はボーカリストでプロになれるから大丈夫」と言ってもらい、就活をスパッとやめ、周囲を説得し、ボーカリストとしての活動を本格的に始めました。

 

ーーー恩師との出会いがあったんですね。

 

古川:そうなんです。ボーカリストとして経験を積む中で、受けていたレッスンを通して自分の成長を感じたり音楽がより深く理解できるようになりました。自分と向き合い、仲間たちと音と向き合うこと。辛いこともありましたが、これは独学ではまず無理だったと思います。また同時並行で予備校で英語の先生をしていました。中学高校時代の学校や塾の恩師に教え方も人間的にも面白い方が多く、その影響で大学時代から始めたもう一つのお仕事でした。教えること、習って身につけたことを自分の言葉で伝えること、そして生徒さんたちの成長と笑顔を見ていくことにハマっていきました。

 

ーーー同時に英語の先生もされていたんですね。

 

古川:はい、しばらく活動を続ける中で様々な不運やタイミングの悪さも重なり、音楽活動を続けるのが困難になってきた時に、ボイストレーナーの恩師から、一緒に働くお誘いを受けました。ボイストレーナーはボーカリストと予備校講師をハイブリッドしたものだと言われ納得しまして、今はボイストレーナーをメインにお仕事しております。今年で12年目です。

 

ーーーなるほど、音楽を通じて自他の成長を実感された古川さんが、教え、伝え、成長する喜びを経験された。いろいろある中で、恩師からのお誘いで、2つの川が交わって、ハイブリッドとしてのボイストレーナー古川さんが生まれたんですね!

 

古川:そうですね。導いてくれた方がたくさんいてくれる幸せに恵まれていると思います。

 

ーーー素晴らしいですね。古川さんの好きな音楽についても、是非伺ってみたいです。といっても、おそらくは無限の広がりと深みがあるでしょうから、読者の方に「これだけは!」というところをご紹介いただけますか?

 

古川:そうですね!無限とまではいきませんが、結構面倒なことになりそうなので、二つに絞ります(笑)

 

ーーーありがとうございます(笑)

 

古川:はい!それではまず1人目はマイケル・ジャクソンです。言わずと知れたスーパースター。“King of Pop”と称され、グラミー賞受賞回数13回、3億枚を超える音楽作品の売り上げを誇る最高峰のアーティストです。私はこの人のライブを中学2年生の時に福岡ドームで見ることができまして、非常に衝撃を受けました。私が洋楽にどっぷりつかるキッカケとなりました。おすすめの1曲はHeal The Wolrdですね。ダンサブルな楽曲が有名ですが、バラードにも名曲が多いと個人的には思っていて、歌詞の内容的にも今の状況にぴったりかと思います。

 

 

 続いて2人目に挙げたいのがベビーフェイスです。ボーカリストとしてもプロデューサーとしても、アメリカの音楽界のトップを走り続けるアーティスト。ソウルやR&Bから始まり、長年にわたりジャンルを超えて幅広いヒット曲を生み出し続けています。私が20代の頃に出会い感動した音楽の大半が彼の関連作品だったりします。ぜひ聴いていただきたいのはHow Come, How Longです。1997年のMTV Unpluggedというライブプログラムでのスティーヴィー・ワンダーとのデュエットが有名ですね。この曲の収録されているライブアルバムは、私史上最高の一枚なので、ぜひ皆さんに聴いてもらいたいです!

 

 

ーーーなんとあのマイケルのライヴを直接体験されたんですね!それは歴史の証人レベルだと思います。たしかデンジャラス・ツアーとヒストリー・ツアーの両方で福岡公演をやったんでしたよね。いま、改めて聴かせていただいたんですが、全く古びない、時代を超えたエバーグリーンな楽曲だなぁ、と感じました。

 そして、ベビーフェイスのご紹介もありがとうございます。これ、「ごめんなさい」案件なのですが、僕の中で、ベビーフェイスといえば80年代終わりにシーンを席巻した2人組の新進気鋭のプロデュースチーム、LA リード & ベビーフェイスの印象が強烈でして。とにかく当時は、最先端のダンスとサウンドが武器のボビー・ブラウンとか、デビューアルバムから立て続けにシングルヒットを連発したポーラ・アブドゥルとか、黒いマドンナといわれたペブルスとか、ブレイクしたR&B系の音楽は彼らのキレキレのサウンドが核になっていたような時期で。僕の中ではその印象が強烈で、その後のベビーフェイスのソロはあまり聴いてなかったんです。

 

 

 

 でも、今、こうしてじっくり聴かせていただいて、メロディーと雰囲気に酔いしれています。古川さん、素晴らしい楽曲と音楽家を教えてくださりありがとうございます。

 

古川:ありがとうございます。ボビー・ブラウンペブルスの作品については、90年代からどんどん遡って聴いた感じでした。90年代R&BとかNewJackSwingをメインコンセプトにしたクラブイベントが多かったので、ダンサブルな関連作品はガンガンプレイされてましたね。

 

ーーーたしかに流行のサウンドとしてLAリード&ベビーフェイスが席巻したような時代でしたね。僕はボビー・ブラウンのRONIというバラードが大好きで、今調べたら、これもベビーフェイスの作品でした!ビックリです!

 

 

さて、ここでプリンスの1曲目をご紹介させていただくわけですが、何かご希望はございますか?こんな感じのを聴いてみたい、というのでもいいですし、古川さんのフェイバリット、マイケルやベビー・フェイスから閃いた1曲をご紹介する形でも大丈夫です。

 

古川:はい!それでは、私はボーカリストですので、プリンスのボーカルの魅力が際立つ一曲をお願いします。勉強したいです!!

 

ーーーでは、Somewhere here on earth のライヴです。

 

 

古川:いやー!イイですねー好きです!5回目リピート中ですがまだニヤけてます(笑)ジャズバラードという感じでもあり、美しく流れるようなファルセットがフィリーソウル的でもあり。メロディアスにスキルフルに歌う部分から語るように歌う部分もあり。力強さ、繊細さ、セクシーさ・・・「表現力の幅広さ」なんて言葉がチープに感じるくらいのパフォーマンスですね!

 バラードって、スピード感がとってもとーっても大事なんです!演奏もゆったり、歌もゆったり…これって一歩間違えるとグダグダ感に繋がってしまうんですね。当たり前ですが一切そんなグダグダは無く、バラードなのにジェットコースターに乗っているかのようなダイナミクス。素晴らしいです。ささやくように歌う時も、パワフルな時も、ファルセットのハイトーンやロングトーンの時も、全てにおいて計算され尽くしたかのような…時間と空間を操るかのような歌ですね!恐れ入りました!途中のスケッチ?してる部分も遊び心あって良いですね。これだけのパフォーマンスならもっと必死になってしまいそうですが、どこか余裕があって…。いやー底無しですね。

 

ーーーしっかりと聴いてくださっただけじゃなく、プロフェッショナルとしての視点をシェアしてくださり、ありがとうございます。特に「バラードの難しさ」はリスナーでしかない僕には、全く意識したことがないところで・・・古川さんの仰るポイントで僕も聴き直してみたんですが、たしかに「ジェットコースター」ですね!

 途中の演奏が盛り上がる前までは、バンドは抑制が聴いていて、一定というか、変化をつけないことで、プリンスのボーカルの変化が際立つようになってるように感じました。逆に、Excuse Meとか言いながら、画面中央から姿を消すのも、「ここは俺じゃなくてバンドを聴いてね」ってことなんでしょうね。で、スケッチ?文字?を書くパフォーマンスでプリンス自身は「サイレント、ミュート」に徹している。それがまた彼自身のギアチェンジになっているのかも知れない!古川さんの知見から、そんなことを感じました。

 この曲は、もちろんスタジオレコーディングのMVもあるんですが、ライヴの一発勝負のほうが、プリンスとバンドがダイレクトに伝わりやすいかな?と思いまして、こちらを選ばせていただきました。

 

古川:ありがとうございます。バラードって本当に難しいんです。軽い気持ちで歌ってみても、「ん?何か違うぞ!?あれ?難しいぞ!?」ってなります(笑)

 この映像の演奏が一定でボーカルが動き、間奏でバンドにバトンを渡す、持ちつ持たれつな関係性。しかもお客さんにも目配せしつつ、全体の雰囲気をクライマックスに向かって盛り上げつつきちんと着地。それをいとも簡単にやってのける素晴らしさですよね。エネルギーがプリンスの頭上に集まって、優しく全体に降り注いでいるようでもあります。

 そしてやっぱりライブ!大好きです!一発勝負の良い意味でのヒリヒリ感だけでなく、オリジナルとのアレンジの違いも楽しめますしね。「ライブ」の良さをあらためてこの動画で感じました!今すぐにでも観に行きたい!ですが・・・今は我慢のしどころですね。

 

ーーーうわぁ、古川さんの「お客さんにも目配せしつつ全体の雰囲気をクライマックスに向かって盛り上げつつきちんと着地」の言葉は、逆に気づかされるというか、プリンスがプリンスである所以が凝縮されているように感じました。

 古今東西、優れたアーティストはたくさんいるんですが、彼がその中でも頭1つ抜けてる部分があるとすれば、「場を把握する能力」ではないかと僕は思っていて。この映像もスタジアムやアリーナクラスのライブではなく、TV出演時のライブなんですが、もう見事に「それ用のパフォーマンス」になっている。

 自分の音楽を届ける先は、TVカメラの向こう側であり、「視聴者はTV画面を通じてプリンスを体感する」という前提をしっかりと把握した上で、歌う時の目線や表情による表現に重点を置いたパフォーマンスになっています。そういえば、この動かない旧式?のマイクもプリンスの表情の変化を際立たせるのに一役買っているのかも知れない。古川さんのプロの見識に触れることで、新たな発見ができています。

 

古川:職業柄どうしても技術から入る部分がありまして、ボーカリストとして、エンターテイナーとしての振る舞いがまず印象に残るんですね。空気をガッチリ掌握して、まさにマエストロ。固定されたマイクも含め、演出と期待感がしっかり噛み合ってて、素晴らしいグルーヴになってますよね。

 ただこれは噛めば噛むほど味が変わるというか、これから先聴いていく時間が増えたり、より深く知っていけば…今回のようなやりとりが出来るとまた新しい切り口が見えてくるような気がします!とてもおもしろいです!!

 

ーーー専門家という言葉以上の、ボーカルという世界に魅了された古川さんの情熱まで伝わってくるのが最高です。僕は全く門外漢なので、全ての知見が刺激的で面白くて。おっしゃるとおり、経験や景色によって違った面が見えてくるからそれもまた楽しみです。さて、2曲目はどんな感じにいたしましょう?ご希望をきかせてください。

 

古川:それでは2曲目ですが、1曲目がジャズバラードでしたので、アップテンポでダンサブルな、イケイケな楽曲をご紹介いただければと思います!!

 

ーーー了解しました!ではLet's Go Crazy の12inchバージョンを今度は音だけでご紹介します。

 

 

古川:これはまたダンサブルですね!思わず体が動くというか、手拍子したくなるというか。少し長めのアレンジになってますが、これは確実に聴く側を踊らせにかかってますよね。途中様々な楽器のソロが挟まっていて、独特な不安定な和音が続いたり、跳ねたリズムと淡々としたリズムが同じタイミングで鳴っていたり、吐息やシャウトも歌に組み込んでスピード感にブースターをかける感じも好きですね。聴かせる歌というよりは踊らせる歌。

 全体を通して、いわゆるJpop的なAメロBメロサビという構成ではなく、ずーっと同じことの繰り返しに近い感じではあるものの、いろんな音がクロスオーバーして最後まで飽きさせない楽曲だと思います。ちなみにこの楽曲って有名だったりしますか?どこかで聞いたことがあるような気もしますが・・・

 

―――プリンス2曲目の全米1位の曲ですが、羽生結弦選手がショートプログラムで使用されて世界的に再評価されるようになった曲です。

 

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古川:羽生選手!そうでした!何度か聞いているとギターの素晴らしさがじわじわと。ロックテイストあふれるソロにしても、バックのカッティングにしても、様々な音色を展開ごとに使い分けながら、ものすごく存在感はあるのに全然鬱陶しく無い。これプリンスご本人が弾いてたりしますか?

 

ーーーはい、これはプリンスのギターですね。

 

古川:彼がギターをもって弾きながら歌っているイメージはあったのですが、こんなギターすごい人だったという印象が正直ありませんでした! 非常に個人的な感覚なのですが、ボーカル一本でやってきている人の歌の良さと、ギターも弾けちゃう人の歌の良さってちょっと違った感じがするんです。ギタリストさんの歌でグッと来る歌い方は、なんだかギターソロのような歌い方なんですね。ギターソロの譜面通りに音を置くように強弱やノリをつくっていると言いますか。

 

―――ギターソロのような歌い方!それは非常に興味深いお話です。

 

古川:エリック・クラプトンや、ジョージ・ベンソンジョン・メイヤーなどが典型例ですね。誤解を恐れずに言えば、特にクラプトンはお世辞にも綺麗な声とは言えないですし、音域も狭く、声量もそんなに大きくはない。ボーカリストとしての能力で言えば、もっと凄い人はいくらでもいる。でも、あのグルーヴは誰にも真似できない。あんな風に歌えたらどんなに素晴らしいか…ギターで出来ていることをそのまま歌に落とし込んでいるので、ボーカル一本でやって来た人には出来ない歌になるんです。Change the worldでグラミーを受賞したのもそういった理由もあるんじゃないかなと。同様にベースが弾ける人、ピアノが弾ける人、ドラムやパーカッションが出来る人…それぞれの歌の良さっていうのがちょっとずつ違っていて、それぞれに素晴らしいんですよね。

 

 

ちょっと話が逸れましたが、プリンスの歌を聴いていると、ボーカリストの歌の良さはもちろん、ギタリストとしての良さもガッツリ出せているなぁと感じます。同じ弦楽器でもバイオリンから三味線まで弾けちゃうような器用さと幅広さを感じます。一曲目と二曲目だけでも比較すれば全然個性が異なりますもんね。時代性なんかもあるかとは思いますが…さっきも書きましたが、正に底無しですね。

 

ーーー詳細なご感想をありがとうございます。しかもリズムや曲の構成について、専門的な視点も交えての解説にビックリです。古川さんの仰る通りで、プリンスの楽曲の特徴のひとつに「飽きさせない仕掛け」が随所にみられるんです。なんていうんでしょう、「圧倒的な反復再生も耐えうる曲の強度」という言葉になってしまうのですが、単純な構造の曲の中にたくさんのアイディアがあったりだとか、聴く人の音楽的嗜好や、音楽的経験によって違う感じに聴こえるとか、そういうところがあるんですね。

 この曲もイントロだけ聴けば教会音楽みたいだし、リズムを聴けばダンスナンバーなんだけど、ギターに注目すると思いっきりロックナンバーだったりしますよね。古川さんの「ものすごく存在感はあるのに全然鬱陶しく無い」はもう、よくぞ言ってくださいましたレベルの表現でして、不協和音含めてこれだけ「盛り盛り」なのに、同時に容赦なく「引き算」して空間をつくってる気がします。そして、「ギタリストはギターソロのような歌い方」という視点は凄く興味深く感じました。僕は医師として運動やリハビリを専門にしているんですが、歌を習得してできた神経細胞の連結と、ギターを弾いて習得した連結が、それぞれまた相互に連結しあっている可能性が十分に考えられるんです。ですから、脳の機能と運動という面から考えても、古川さんの仰る通り、クラプトンのボーカルは、「ギターを極めたアーティストならでは」なんだと思います。

 例えば、カラテだけやってきた選手のカラテと、バレーボールでジャンプ力鍛えまくった人のカラテって同じじゃなかったりするので、「歌」も「演奏」も大きな意味では運動ですから、表現として違いが生まれるというのはあり得ると思います。これも、言われてみれば、ですが、スティングはジャズ・ベースの名手ですし、デヴィッド・ボウイはサックスが上手い。マイケルは身体表現であるダンスで音楽を感じさせるし、ピーター・ガブリエルはドラマーならではのリズムが音楽の核になっている・・・。古川さんの視点で音楽家と楽曲を見つめていくと、いままで聴いていた曲がさらに深く多様性をもって聴こえるように思います!

 

 

古川:なるほどなるほど!飽きさせない仕掛けがあるからこそ、反復再生に耐えられるわけですね。「引き算の美学」なんて言葉もよく使われますが、自分が音楽製作活動をしているときにこの感覚をもっと深く理解していれば、悩み苦しんでいるときにも状況を好転させられたかもなぁと思います。

 そして脳と神経細胞の連結のお話は本当に興味深い!私は剣道経験者なんですが、違うスポーツから移ってこられたり、小学生の頃に他のスポーツと両立されているような方は剣道オンリーの方とスタイルが違いましたし、そもそも体型や性格によっても剣風は変わるし、ざっくり言うと育って来た環境が違うと何もかもが違って当然ですよね!なんだかプリンスの楽曲とこのやりとりを通して、今までバラバラだった自分の中のパズルのピースがどんどん組み上がってるような感じがしています。大きな話になってしまいますが、人間の成り立ち?みたいな。その人の音楽性や個性みたいなものをさらに深く読み解くきっかけになるというか。

 ボーッと聴く音楽もそれはそれで良いのですが、腰を据えてじっくり聴きながら、さらにこういったやりとりをさせていただく中で、その音楽家の様々な経験や努力の痕跡、当時の流行や時代背景だったりも含めてかなり深いところまで抉っていくことができているんだなぁと感じます。

 私はボイストレーナーという職業に就いていますが、それ以前にボーカリストで、もっと言うとただの音楽好きです。今私の中の「ただの音楽好き」の部分がとても満たされてる感じがしています!あれ?そういえばここ、「紫大学」ですよね?なんか今とても良いセッションを受けているような・・・!

 人を理解する、と言うことに対しての僕なりの方法論が再構築されつつあるのかもしれません。家族はもちろん、友達やレッスンの生徒さん、初対面の人に対しても、オンラインでもオフラインでも、今後もっと深く理解し合えるようになる気がします。楽曲やアーティストを分析し、理解していこうとすることが、多様性の理解力だったり、受け入れる器の広がりにつながるとはおもってもみませんでした。

 

ーーー古川さんの仰る通りで、音楽に対してボーッと聴く、それも意味があるし、音楽の役割のひとつですよね。でも、それだけで終わるには非常に勿体ないし、音楽から学ぶことであったり、音楽の人間への作用であったりは、相当奥深い世界なんじゃないか?と思うんです。

 ましてや、古川さんは音楽を受け取る側だけではなく、発信する側であり、さらには発信する人たちの能力を引き出し、エンパワーする側じゃないですか。そのご経験と探求心があるから感じられる楽曲の魅力って絶対にあると思いますし、僕はそれを直に感じられないから、古川さんに見えた(聴こえた)景色を言葉にしてもらって、僕なりに再構築させてもらうという極上の時間を過ごさせていただいてるわけです。

 

古川:ありがとうございます、嬉しいです。

 

―――古川さんの「ただの音楽好き」のお話を伺ってて想い出したのが、アメリカでセレブリティが集まるパーティーがあるんですが、もうトンデモナイクラスの歌手やらダンサーやら俳優やら映画監督やらが集う場で、「あのプリンスが来る」ってなると、会場がざわめくらしいんですよ。名前のある人たちからのリスペクトが半端ないらしくて、みんなファンの顔になっちゃうそうなんです。

 プリンスと一緒にステージで演奏してるバンドのミュージシャンたちなんかも、普段はめちゃくちゃ鍛えられてたり、思いっきりダメだしされてりしてるのに、ステージでレッツ・ゴー・クレイジーを演奏するプリンスを後ろから見てて、「うわぁ、プリンスだ」って思うらしいんですよね(笑)なので、きっと「音楽好きに戻る」って最高なんじゃないですかね?エリック・クラプトンも「プリンスは音楽のすばらしさの生まれ変わりだ」とコメントしてるくらいなので、「好きを刺激する天才」なんだと思います。

 

古川:あぁ…なるほどですね。音楽という大海原をヨットで悠々と風に流されてみるのも良いですが、深海まで、普段は光が届かないようなところまで探索してみると、新しい何かに気付くことができる。点が線になるような感じかな。私も再構築させていただいてます!

 そしてプリンスのエピソード、素敵です!トップオブトップはやはりすごいなぁ~。気づけばただの音楽好きになっちゃってる。非常に刺激的です!

 

ーーー古川さんは、詩人ですね!さて、ここまでボーカルを味わえるジャズバラードのライヴ、そして羽生選手も使用したレッツ・ゴー・クレイジーの元々の長さのものを聴いていただきました!いよいよ3曲目、どんなので参りましょう?

 

古川;ここまでの流れで、プリンスの楽曲や歌だけでなく、プリンスという人の人間性や音楽性の奥深さにとても興味が湧いて来ました。そして先ほどから出て来ている「再構築」という言葉。プリンスの音楽の歴史や彼の人生の中で、ガラッとイメージが変わった曲だったり、それまでの積み重ねと違う方向性にシフトしていった曲だったり。良い意味でリスナーを振り回しつつ、それでもやはりこれぞプリンスだ!というような楽曲があればご紹介いただければと思います!

 

ーーーでは、Popeをご紹介します。

 

 

古川:おぉ!ヒップホップですね!これまでの2曲とまた全然毛色が違う!90年代のNew Jack Swing風なトラックに軽快なラップが乗っかってますが、これもプリンスなんですよね?ラップもできてしまうとは!!クレジットを見てもエンジニアリング以外のトラックも詞もプロデュースも全てご本人。女性ボーカルとの絡みも素晴らしいし、すごいなぁ。ほんと何でも屋さんですね!こんな才能をなんでこれまで見落としていたんだろうか…

 リスニング力がイマイチ自信ないですが、popeとdopeで韻を踏んでいたりしますよね。英詞を書く方の方が日本人よりも韻を踏む文化があるとはいえ、センスを感じざるを得ないですね。

 ボーカルというか、ラップの部分の発声なんですが、声帯の使い方や鼻腔をはじめとした頭蓋骨内の共鳴の具合がずーっと同じで安定しているんですね。綺麗な倍音が響き続けているのが特徴的で、これはとても高等テクニックなんです。ものすごく絶妙に無理なくコントロールされている。あまり力強く張り上げているわけでも無いし、もちろん大きな声でもない。でも非常にマイク抜けが良いので鋭く聞こえてくる。跳ねたトラックの上に小気味好く乗っかるラップと、しっとりした女性ボーカルも含めたバランス・・・ミックスの妙でもあるんでしょうが、とても気持ち良いバランスで何度でも聴けますね!

 

ーーー素敵なレビューありがとうございます!実は「これぞプリンスだ!というような楽曲」という古川さんのリスエストを頂き、「うーーん」と考え込んでしまったのです。というのも、プリンスという人は、「これがプリンス」的な他人からの定義や偏見に対して、「おいおい違うだろ」って態度で示してきたようなところがあってですね。いわゆる代表曲、有名曲、ヒット曲はあるんですが、それらも結局は彼のダイバーシティのひとつ、あるいはいくつかの組み合わせに過ぎないところがあって。

 僕がどの曲を選んだところで、「僕が考えるこれぞプリンス」になってしまうんです。それだけ「スケールがある」ともいえるけど、逆にそれが「わかりにくさ」にもつながってしまうんですね。そのように迷った挙句、このPopeをあえて選んだのは、「これぞプリンスという曲」ではないけれど、ある意味彼の多様性が端的に表れていように思ったからなんです。

 

古川:なるほどー!ダイバーシティか!

 

―――そうなんです。古川さんが解説してくださった、この曲のプリンスのラップの唱法は、僕にとっては全く目からうろこで、知らないできくと一本調子に聴こえる「安定」は、高等テクニックなんですね。そういう視点をいただくと、なんかラップがベースのように聴こえてくるというか、ラップの安定感ゆえに、それ以外のサウンドが際立って聴こえてくるから面白いですね!

 

古川:何事も「力任せ」「勢い任せ」より「良い具合に制御して持続させる」ことのほうが難しいですよね。あの感じだと思っていただければ。それにしても、プリンスはヒップホップもやってしまうんですね。これぞプリンス、に限界が無いんですね。

 

ーーー彼の特質として、新しい音楽スタイルに触れた時、それを飲み込もうとするところがあるんです。「ちょっと拝借」とか、「エッセンスをとりいれる」とかではなくて、なんていうんでしょう、怪獣みたいにガブッとスタイルごと。80年代の終わりぐらいから、ヒップホップがムーブメントとしてグワッと台頭してきて、それまでのR&B系のアーティストは、ヒップホップに対してどのようなスタンスをとるか、試されるような時期だったんです。

 例えばマイケル・ジャクソンであれば、ニュージャックスイングの旗手であったテディ・ライリーを迎えた”Jam”にヘビーDのラップを乗せて、当時の最先端をやる、みたいな。プリンスは「できるようになればいいんだろ?」って感じのスタンスで、ラップを練習して、ループサウンドも構築して、DJプレイもマスターした。ヒップホップの手法を取り込んだ上で、これに生演奏の技術を上手くブレンドして、ニュー・ファンクというスタイルを確立してしまったんです。

 

古川:なるほど…スタイルを完全に飲み込もうとするんですね!そうすると中途半端なちょい足しとは全然意味合いが変わってしまいますね。おっしゃるようにマイケルは、音色や奏法、映像にしても、その時のスペシャリストと手を組んで最高のものをつくりあげようとしてました。常に最先端に居ようとするスタンス。

 でもプリンスのスタンスの取り方はちょっと勇気が必要ですね。普通のミュージシャンの感覚だと、下手すると二番煎じだと揶揄されかねないし、方向性を見失ってしまうかもしれない。でも彼は当然そのレベルでは無かった。きっと尋常ではない研鑽を積んで、新たなスタイル飲み込んで、モノにして、変わり続けたんですね。

 

ーーーいま、古川さんのおっしゃったところがとても興味深いところでして。あえて誤解を恐れずに書くと、マスターして、ブレンドして、トンデモなく凄いの出してくる場合もあれば、「あれ?どうした、プリンス?」ってなった曲が後になって「ああ、あの時のあの挑戦が、今、こういう形で結実したんだな」ってわかるような場合もあるんです。クオリティというよりも、音楽的な方向性という意味でですね。

 その結果、それまでの支持者をガツンと突き放すようなこともしょっちゅうあって。それでも、そんなことはお構いなしに、ブレずに突き進む様子を見せてくれる感じがあるように思います。

「レッツ・ゴー・クレイジーみたいな踊れるロックも良いけど、でも、Popeのようなクールなヒップホップだって、素敵な音楽だろ?」みたいな。だから、僕らリスナーの扉を次から次にあけてくれる人ですよね。

 

古川:今のお話で、プリンスって、とことんgiverなんだろうなぁと思いました。常に新しい価値を提示し続ける。たとえ賛否両論だったとしてもグイグイ突き進んで、固定概念をひっくり返し、そして引っ掻き回す。カオスであることにワクワクする感じなのかな。未知のものを取り入れて、今までと違う自分になってしまっても全然OK。そしてそれを作品として嘘偽り無く素直に世の中にに提示する。そうやって結果的に新たなスタイルを創り上げてしまう。そこが彼の魅力なんですかね!?

 もちろん技術の磨かれ方も半端ない。dopeだ。控えめに言って最高だ。常人の理解を超えてます。自分で書いてて自分の理解を超えてる話なんですが、「変わること」は、突き詰めると「変わらないこと」になるというか。変わり続けようと試みることで「らしさ」が知らぬ間に増強されるというか。今知らぬ間に、と書きましたが、そこも実はプリンスには見えていた、分かっててやってたのかもしれませんね。

 

ーーーわずか3曲、そしてこの対話から、そこまで適切に捉えていらっしゃる古川さんにビックリしています。僕なんてひたすら追っかけて聴いてきたけど、そのような洞察に至ったのは、ついここ2-3年の話ですから。しかし、実際に変わり続ける、しかも音楽的にもどんどんスタイルを更新して、時にはセールス的にもしっかり結果を出すってやっぱり大変だと思うんです。

 

古川:はい。普通なら大変なことです。成功体験は甘い蜜のようなものですから。離れがたいものです。

 

―――この大変さって、同業者であったり、表現者にこそその凄さがわかる、というか。古川さんも表現者でいらっしゃるから、「全く異なる3曲がひとりから出てくること」の意味が分かったんだと思うんです。

 

古川:はい、それをやっちゃうのがプリンスなんですね。

 

―――「らしさ」ってやつですね!実は古川さんにお伝えしてなかったことがあるんですが、プリンスはマイケルのことも歌っているし、ベビー・フェイスに至っては自分の曲の中でわざわざ名前を出しているんです。Hardrock Loverという曲なんですが。

 

 

 ティーヴィーとは、楽曲でもライヴでも共演していますし、エリック・クラプトンがドラッグやアルコールまみれでどうしようもなかった80年代中盤、プリンスのパープル・レインの映画を見て、曲を書き、再起したそうなんです。ジョージ・ベンソンとも親交があって、ベンソンはプリンスにギターをプレゼントして、プリンスはそのギターをとても大切にしたそうです。

 

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 こんな感じで、古川さんの大好きなミュージシャンたちとも親交があり、相互に影響を与えてきてるんですよね。今回の対話で、僕自身、彼らの音楽に興味がわいてきたし、ちゃんと聴きたいな、と思いました。そして、古川さんが音楽に心底惚れていて、曲の感想や古川さんが感じたプリンスを真摯に言葉にしてくださったことにも感動しました。音楽でここまで盛り上がれるって素晴らしいな、本当に人をつなぐんだな、と。

 

古川:わー、なるほどですね。みんな繋がってる。高次元で影響しあっているわけですね。いろいろと探して聞いてみることで、今回のやり取りと自分の今までのデータをアップデート出来そうです。クラプトンのお話は知らなかったなぁ・・・。マイケルやベビー・フェイスについても彼らの歴史とともに振り返ってみようと思います!

 今回はたった3曲でしたが、ものすごく濃密なやりとりが出来てとても楽しかったです!勉強になりました!今後の音楽の向き合い方にも良い影響が出るでしょうし、これからも僕なりにプリンスと彼の多様性に向き合って、もっと深く理解できればと思います。これを機に沼にハマってしまうかもしれませんね(笑)その時には救いの手を差し伸べていただければと思います!

 

―――もちろんです!ご自身に生かしてこそ、ですもんね。

 

古川:今は新型コロナの影響で休業中ですが、状況を見つつトレーナー業を再始動する予定です。今回のやりとりで引き出していただいた言葉や感覚、そして学んだことは、きっと今後に活かせると思っています。良いトレーナーであるべく、変化を繰り返し自分の幅をどんどん広げていきます!休業中にこんなに脳味噌に良い汗をかけるとは思ってもみませんでした!清々しいです!本当にありがとうございました☆

 

ーーーこちらこそありがとうございます。古川さんとの対話で、新しいプリンスをたくさん発見できました。それだけじゃなく、変化ってなんだろう?多様性ってなんだろう?いろいろやってるのにそこに「らしさ」があるのはどうしてなんだろう?みたいな感じで、どんどん思考が発展していくのを感じました。素晴らしい音楽家と、古川さんのボーカル追求から得られた叡智が重なるとこんなにエキサイティングになるとは・・・!これからもご活躍楽しみにしています。今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

古川:はいっ!エキサイティングなひと時をありがとうございました!マニアック上等で思いのままに話しましたが、うまいこと拾っていただきつつ、さらに繋いで拡げていただいて感謝です。プリンスとの出会いは、今後の自分の音楽人生のターニングポイントになりそうです。今後も期待しております!よろしくお願いします!

 

ーーーこちらこそよろしくお願いします!

 

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プリンス 7 つの質問  15 立本 真己

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1.あなた自身を紹介してください。
 
Touchy(タッチー)と名乗っている神戸在住の四十路サラリーマンです。かれこれ20年近く「partymind」というプリンスのファンサイトを運営しています。
 
 
2. あなたはどうやってプリンスファムになったのですか?
 
ファーストコンタクトは、姉が友人から借りてきたVHS「Purple Rain」です。その頃、私は中学生で「なんだこれは?」という感じでした。とにかく凄いという印象が心のどこかに引っかかりました。しかし、彼の強烈なキャラクターに抵抗を感じ、距離を置いてました。
 そんな私がどっぷりハマり出したのは、高校の頃に買ったベストアルバム「The Hits / B-sides」です。当時のキャリアを網羅した作品のレンジの広さにノックアウト。最初は2枚バラで出ているバージョンを買ったのですが、あまりに良過ぎて3枚組をすぐに買い足しました。そこから過去のカタログを集めまくる日々でしたね。
 
 
3 .あなたの最も記憶に残る「紫の経験」は何ですか?
 
 私は遅咲きのファムだったので「プリンスを生で観ないまま人生が終わるかもしれない」という危機感を感じ、2002年にミネアポリスに観に行きました。
 いわゆるセレブレーションというイベントで、1週間毎晩ペイズリーパークスタジオでプリンスのライブ漬け。初プリンスであまりに濃密な時間を体験したため、吹っ飛びっぱなしでした。
 全編が最高の経験で色んな思い出があるのですが、特に最終日です。プリンスがピアノで弾き語りをしてくれて、最後のほうで「God」を演奏したんです。そのときはもう顔面くしゃくしゃになって、一人で号泣していました。感動で泣いたことは過去にもありましたが、あそこまで号泣したのは最初で最後でしたね。何に感動したのか…? 言葉で説明するのが凄く難しいんですが、とにかく音楽が美しかったこと、異国の地であったこと、そして人生最高の1週間の締め括りとして色んな思いが去来したのだと思います。その年にONAツアーで来日公演もあり、2002年は私の人生の中でも極めて特別な年になりました。
 
4. あなたのトップ3のソウル・ソング(重要曲)は何ですか?
 
3つに絞るのは難題過ぎますが、本日の気分で挙げてみます。
 
When Doves Cry
 
 
 これはプリンスを好きになり出してから今に至るまで不動の一位をキープしている曲です。(同率一位はアリ)曲の構成から歌詞まですべて完璧過ぎます。アルバム「Purple Rain」では映画のストーリーもあるため、青臭い男子の葛藤が歌われるのですが、当時の私はビンビンに共感していました。不器用な恋愛を経験したことのある人は漏れなく共感できるんじゃないでしょうか。それにしても"This is what it sounds like when doves cry"って、改めて凄い歌詞だと思います。普通思いつきます?
 
 
 
I Wish U Heaven
 
無償の愛を歌ったものだと思っています。天国に恋をしたような気持ち、と表現された「Lovesexy」はこの手の名作の宝庫です。そして、「Purple Rain」や「Nothing Compares 2 U」と同様、プリンス没後に位置付けが変わった歌でもあります。いまだにこの3曲がかかると涙ぐんでしまいます。でも「I Wish U Heaven」を聴いて流す涙は悲しみに暮れるそれではなくて、何というか魂の浄化みたいな感じがします。
 
God
 

God ~ Prince from Princefan046 on Vimeo.

  3つ目の質問で回答した体験談が強力だったので、最後にこの曲を挙げさせてもらいました。"God made you, God made me too, He made us all equally"というくだりが、プリンスからの大事なメッセージに思えるのです…。
 
 
5. 素晴らしいアーティスト/ミュージシャンをプリンスが私たちに紹介しました。あなたのお気に入りは誰ですか?
 
沢山いますが、ジャネール・モネイですかね。プリンスを聴いてなかったらスルーしていたかもしれません。あまり最新の音楽シーンをチェックしていないので、素晴らしい才能をプッシュしてくれるプリンスに感謝しています。
 
 
6. プリンスの音楽は人生の教訓とメッセージでいっぱいでした。プリンスがあなたに与えた最も重要なものは何ですか?
 
 信念ですね。常に人と違うことをしてきた彼ですが、それは常にリスクを伴うものでした。初期の過激なイメージ然り、音楽性然り、ミュージシャンの権利主張然り。もっと無難なやり方はいくらでもあったと思いますが、彼はずっとチャレンジを続けてきました。私はプリンスの足元にも及ばない凡夫ですが、困難に直面したときに自分を曲げずにいる姿勢は彼から学んだんだと思います。
 
7. 次世代にプリンスを紹介する方法は?
 
 「好きになれ」といって好きになるものではないので、こればかりは彼の音楽を「体験」してもらうしかないと思っています。ドラマや映画でブームになることはあるでしょうが、流行って一過性のものですよね。いまやプリンスは、ビートルズスライ&ファミリーストーンジェームス・ブラウンデヴィッド・ボウイといった歴史的なヒーロー達と同じ立ち位置になっているので、若い世代でも知る機会はあると思うんですよね。そんな新世代の子達が興味を持ったときに、我々ファムが情報を伝えることができればいいのかなと。私自身も諸先輩には色々教えていただきました。微力ながら、拙サイトもそういうところでお役に立てれば望外の幸です。
 
 

 

食わず嫌い王子 06 山本 裕美/人財育成コンサルタント

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食わず嫌い王子 ~あなたの殿下がここにいる!かも?~

ヨーロッパやアメリカでは「現代のモーツァルト」として高く評価されリスペクトされる一方、日本の一般層には「プリンス?誰それ?」状態。そんな時代に、究極のお節介企画、『食わす嫌い王子』。プリンスをあまり聴いていない方、存在自体知らない若い世代に、「殿下の音楽は届くのか?」実験的インタビューをここにお届けします。

06  山本 裕美さん/人財育成コンサルタント

アスパラ 山本裕美 (@wakabagou) | Twitter

 


ーーーこんにちは、紫大学です。この度は、おせっかい企画へのご参加、ありがとうございます。まずは、山本さんの自己紹介をよろしくお願いします。

 

山本:山本裕美と申します。「自分で考えて行動する人の育成」と「個と組織の成長の支援」をテーマに活動している人財育成コンサルタントです。塾講師、OL、勤務社会保険労務士の仕事を経て2004年に起業しました。最初は就職支援に携わっていましたが2011年に働く人々の支援にシフトチェンジしました。現在は企業での人財育成コンサルティングと現場実践型・対話型の研修やワークショップの企画運営などが主な活動です。

 

ーーー働く人々の支援のプロとして活躍されているんですね。自分で考えて行動する、早くも面白くなりそうな予感がしています。趣味や好きなことはございますか?また音楽はどのようなのがお好みですか?

 

山本:そうですね。社労士時代から通算すると、気づいたら「ひとと仕事」に20年ぐらい携わっていることに先日気づきました。この対談で自身への新たな気づきも得られそうで楽しみです。趣味は筋トレ、そして5~6年前からバスケットボール観戦にどっぷりハマっています。9月から5月のシーズン中は毎週末、日本全国どこかのアリーナに出没する生活を送っていましたが、2月末からの無観客試合、そしてリーグ戦中止になってしまい、今はそのエネルギーを筋トレにぶつけています(笑)

音楽は、今は何かジャンルを決めて聴くことはあまりなく、運転中に流しているラジオやどこかで出会って心に残ったものを探して聴いていることが多いですね。聴いているうちに自分の思考にエネルギーがシフトすることが多く、もしかしたら「聴く」ということをやっていないかもと今なんとなく思いました。

 

ーーーバスケ観戦に、筋トレ。アクティブな生活ですね!音楽も心に残ったものを聴く。人と仕事の専門家らしいスタンスを感じました。この対談は、その人の趣味趣向やライフスタイルに合わせて、プリンスの楽曲を3つ選んで聴いていただく、という実験企画なのですが、山本さんは「プリンス」にどのようなイメージがありますか?率直なところを教えてください。

 

山本:ありがとうございます。アクティブと言えばアクティブかもしれませんが、自分がやることとやらないことは結構明確に分かれているのでピンポイントでアクティブなのかもしれないですね。そして、プリンスのイメージですね。ほんとに率直に言っていいでしょうか・・・?プリンスを愛していらっしゃる方との会話の中ですから憚られますが、お名前自体は知っていましたがまさに「誰それ?」状態です。ステキな企画にお声かけいただいたので、気の利いたコメントをしたいと思って情報収集しようと思ってググってみました。まず最初に見つけたWikipediaの記事を読もうと思いましたが・・・・・情報量の多さか何なのか分かりませんが全く頭に入ってきませんでした(汗)今のところはこんな状態です。

 

ーーー逆にありがたいんです、「誰それ?状態」というのは現実そうですし、この企画自体、その現状認識からスタートしています。世界最大の音楽授賞式、グラミー賞のスタッフが主導で、グラミーの直後にプリンスを祝うトリビュートコンサートが2020年1月末に開催されたんです。アッシャー、アリシア・キーズジョン・レジェンド、コールドプレイのクリス・マーティンフー・ファイターズ、H.E.R.、ベック、といった当代きってのミュージシャンたちが出演して全曲プリンスを演奏したんですが、これがCBCで放送されて、新型コロナ以前の最大の音楽イベントとして、アメリカでは早くも再放送が決まったくらいなんです。

 

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山本:なるほど、海外では盛り上がっている!

 

ーーーそうなんです。欧米の盛り上がりに比して、日本では悲しいくらいに知られていなくて・・・。山本さんが仰る「全く頭に入ってこない」ってのも、実は当然のことなんです。僕らリアルタイム世代が何十年もかけて聴いてきたから、歴史や概要がわかるだけで。ですから、無理やり例えるならば、メニューが300種類ぐらいある何でもありのレストランに入ったようなもので。ですから、今まで彼の作品と接点がなかった皆さんと、こうして対話できる機会を心からありがたく思っているんです。

 

山本:そういえばWikipediaでもたくさんのアルバム名が並んでいました。何を基準に読んでいいのか分からず断念したのかもしれません。メニューが300種類のレストランと聞くと、一気に見え方が変わってきました。選ぶのが楽しそうでワクワクしますね。

 そして「誰それ?状態」の現状認識からスタートされているというのは、共感するところがあります。私は9年前から研修にケースメソッドという教育手法を取り入れているのですが、それこそ当初は私の周りや関わっているクライアント先では「何それ?状態」からスタートしてようやく少しずつ浸透してきたところなんです。カレーを食べたことない人にカレーの味とおいしさを説明する難しさとでも言いましょうか。「とにかく一度食べてみて!」と勧めてきたことを思い出しました。

 

ーーー曲紹介が始まる前の、この対話がすでにめちゃくちゃ面白いです。よくよく考えてみれば、「王室に生まれた」とか、「超有名人の家に生まれた」とかを除いてほとんどの人や活動は「誰それ?」からスタートするわけでして。山本さんの実体験のごとく、「少しづつ」に挑んでみたいと思います。ではさっそく1曲目を選んでみたいのですが、こんなタイプの曲がいいとか、ジャンルだとか、今のフィーリングだとか、どんなことでも構いません。ご希望をいただければと思います。

 

山本:記念すべきプリンスとの出会いの1曲をどうしましょうか・・・。あ!そうだ。実は今、ジョギング中に聴く曲を探していたところでした。3月からジムが休館になってしまい、自宅でトレーニングを続けているんです。筋トレはYouTubeの動画を見てやっているのですが、有酸素運動をどうしたものかと思いジョギングを始めました。走るの興味なかったのですが、始めると楽しくなってきたところなんです。ほとんど人がいない田舎道をひとりで走るパートナーになりそうな曲があったら教えてください。

 

ーーー具体的な情景まで教えてくださりありがとうございます。では、ジョギング用としてこちらを選んでみました。Stevie NicksのStand Backです。

 

 

山本:ご紹介ありがとうございます。それでは、これをBGMに後でちょいと行ってまいります!

(約2時間が経過してからの返信)

ゼェーハーゼェーハー。人体実験から戻ってまいりました。6キロ走りながら9回目の途中まで聴きました。記憶が新鮮なうちに実験中に感じたことをつらつらと書き記しておきます。今から走り出すぞ^というところでイントロが流れだして「おおっ!これはテンション上がってきた!」と軽快に走り出しました。そしたらパンチの利いた低音の歌声が響きだしてさらに力が湧いてきました。テンポよく走りながら、音楽と自分の思考を行ったり来たりしていて、まさにジョギングにあった曲。走りながら感じたのは、いつもより身体の軸がしっかりしていたことです。疲れると前傾姿勢になってくるのですが、今日はブレないというか。頭のてっぺんからまっすぐ軸が通っている感じがしました。

 気持ちよく走りながら、また曲に意識が戻って聴いていたら、力強いだけだと思ったら♪Stand back Stand back ♪のあたりになぜか繊細でちょっと弱いというか儚げな感じがしてきて、それでも腹が据わった感じは根底に流れたまま。不思議で強くて優しい印象を持ちました。ちなみに!6キロの自己ベストタイム更新できました。

 

―――うわぁ、ちょっと驚いています!初めてご紹介させていただくStand BackをBGMに自ら人体実験してくださったこと。それから、曲が走る感覚にどのような影響を及ぼしたか、内的な変化を含めて記してくださったことに!Stand Backは世界中で今も聴かれ続けている曲ですが・・・ジョギングとリンクしての記述は、おそらく「初」だと思います!

 

山本:よかったぁ!

 

―――この曲は、ちょっと独特の過程で、完成していまして。フリートウッド・マックという歴史的なスーパーバンドがあるんですが、そのキーパーソンのひとりであるスティーヴィー・ニックスがあるときプリンスの曲、「リトル・レッド・コルベット」をラジオかなんかで聴いたらしいのです。気に入ったニックスは、リトル・レッド・コルベットをベースにしてこのStand Backを書き、プリンスに連絡をしました。

「あなたの曲にインスパイアされた曲を書いたの、もしよかったら協力して」みたいなことを言ったら、プリンスはすぐにスタジオを訪ねたそうなんです。そこでキーボードを演奏して、曲の完成をアシストした。結果、この曲は全米5位を記録、ニックスのソロの代表曲のひとつになったんです。

 元歌となったリトル・レッド・コルベットは、プリンス初のトップ10入りヒットにして、MTVで初めて流れたブラック・ミュージシャンの曲でもあります。いわゆる人種の壁を超越した曲が、プリンスに影響を与えた側の先輩、ニックスにもリーチして影響の恩返しを果たした。白人社会の一般層の「プリンス?誰それ?」を「プリンス!」にした曲に閃きを得て共作された曲として、Stand Backをご紹介させていただいた、というわけです。

 

山本:「あなたの曲にインスパイアされた曲を書いたの、もしよかったら協力して」この言葉、一体何でしょうか。心の奥から何かぶわーっと溢れてきました。今の私にとてもタイムリーな言葉かもしれません。今まで16年、フリーランスでやってきました。もちろん、これまでもいろんな人との関わりで仕事をしてきましたが、今これと似たような感覚で共感とか刺激とかを通して人とつながって何かを始めていくことがとても多いんです。つい最近知り合った人、しかも直接会ったことなくオンラインでつながった人と何かを始めていく。それも、互いにとってとても大切なものを扱って、シェアしあって、新しいものを構築していくことが増えています。

 

 

あ、リトル・レッド・コルベットも探して見てみました!これめっちゃかっこいいですね!!!!「プリンスさまはじめまして」なんですが、セクシーだなあというのが第一印象。動きに見とれてしまいました。お顔立ちも美しくて、目が離せない感じです。

 

―――おおお、動くプリンスもご覧くださったのですね!山本さんの「共感とか刺激で人とつながって何かを始める」って素晴らしいですね。プリンス自身がフリートウッド・マックの大ファンで、メロディアスで親しみやすい音楽性はもちろん、男女混合編成のバンド形態なども大いに影響を受けているんです。

 

 

 だから、スティーヴィー・ニックスに電話をもらったプリンスは、めちゃくちゃ嬉しかったんじゃないですかね?2人の感情の高まりみたいなものも、音に反映してるような気がしますし、「新しいものを構築する」際の山本さんのマナーにも大いにリンクしてような気がします。

 

山本:わー、ご自身がリスペクトしている方から「協力して」と言われるって、魂込めて仕事や表現をしていたらそんなうれしいことはないでしょうね。まさに今、こちらのオファーいただいたときの私がそれです。影響を受けた相手からのオファーは「自分が役に立てることがあるかも!」と思えて、その場に立ったら「これからどんなことが起こるんだろう」と最高にワクワクしますよね。そういうご縁で「新しいものを構築する」ときって、その場がひとつの脳になっていてそこで互いの大切なもの、つまり価値観の一部が混ざり合って化学反応を起こしていくような感じがします。

 この曲もまさにそんなエネルギーがあふれてるんですよね、きっと。そう思って改めて聴くと感慨深いです。それぞれ、自分ひとりでは表現できなかったものが、セッションによってその場で互いに影響を及ぼし合って「新しいものを構築していく」パワーを感じます。表現や創造の喜びってこういうことなんだろうなあ。

 

ーーーとても興味深いところですね。やはりプリンスがプリンスとして結果を出した。それが作品を通じて、つまり作品がブリッジとなって、スティーヴィー・ニックスに届いた。そこで新たな楽曲が生まれた。ニックスは、お礼としてロイヤリティーの50%と共作者としてのクレジットをプリンスに申し入れたそうなんです。プリンスは「いらない」と断ったらしいのですが、最終的にはレーベルやビジネス面での調整もあったのかな、その条件で合意となったそうです。

 

山本:そんなやりとりがあったんですね。自分がまっすぐ世の中に送り出したものを誰かが受け取って反応する。そこからつながりが生まれ、互いに影響を及ぼし合いながら新しいものが生まれていく。今、私自身がこの場で貴重な体験をしていますが、きっとこういうスパーク的なものは今このときも世界のいたるところで無数に起こっているんでしょうね。なんだかとても幸せな気持ちになりました。

 

ーーーこちらもです。このスパークが読んでくださる皆さんに伝わっていくといいなと思います!では2曲目に参りたいと思います。ご希望をお知らせください。

 

山本:ありがとうございます。2曲目・・・・・そうですね、では「闘う男」を感じられるような曲があればぜひお願いします!

 

ーーーでは、Love Signをご紹介します。映像と共にご覧いただければ!

 

 

山本:ありがとうございます!2曲目の Love Sign 聴きました。こ。これは。。。ちょっと驚きました。「闘う男」というリクエストで、ハードなのが来ると思いきや軽快なリズムで始まって、曲とともに映像を追っていたら最後にズキュン♡と堕ちてしまいました(笑)

 そもそも「闘う男」をリクエストしたのは、先にも話しましたが私はバスケットボール観戦(Bリーグ)が好きなんです。シーズンで50試合近く、片道何時間もかけて全国各地の会場に大好きな選手を追いかけて応援しに行く生活を5年ほど続けています。今シーズンは2月末からコロナの影響で試合が中止になってしまって「闘う男」に飢えていて、それを埋めたくてリクエストしたのでした。

 私はバスケを観に行くと、ボールではなくゴール下のセンターやフォワードの選手たちのゴリゴリのポジション争いにばかり目が行ってしまうんです。2メートルぐらいの大きな男たちの熱い闘い。そのゴリゴリを感じたかったので、正直これは斜め上・・・というより斜め後ろぐらいから来た感じでした

 でも何度か見返すうちに、暗殺者(?)の女性にどんどん意識が向いていきました。彼女と彼の闘いを描いた映像ですが、彼女は最初に依頼人からのオファーがあった時点ですでに戸惑いがあったのか。プリンスのもとに向かう道中にも心の揺れが垣間見られて、椅子の背に銃を向けたときも手がブレている。ここ、とても興味深かったです。それと、銃をチケットに替える会場に向かったところ。赤いレザースーツを脱いでいたところ、そしてアタッシュケースの中のスポンジのくぼみがなくなっていたところがとても印象的でした。

 

ーーーおおお、面白いですね。プリンス、実は高校の時バスケ部で。身長158cmでアメリカでは相当小柄なんですが、動きが相当速かったらしいです。ステージのバスケのゴールを設置してライブ中にシュートしたり、NBAも観戦にいったり、彼のスタジオにもバスケゴールが設置してあったから、相当なバスケフリークです。なので、山本さんとここでもリンケージがありますね!

 

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山本:なんと!プリンスはバスケ部だったのですか!!!ここにきて一気に親近感(笑)先ほどの「プリンスさまはじめまして」で出会ったリトル・レッド・コルベットの動画を観たときに、その動きの素早さとしなやかさに目を奪われました。小柄であの俊敏な動き,からすると、きっとポイントガードでしょうね。プレイがなんとなくイメージできます。闘う男を感じる曲で、何でこの曲を選んでいただいたのか?興味津々です。

 

―――プリンスは1978年にワーナーブラザーズと契約してキャリアを進めてきたんですが、1993年頃に拳銃反対のチャリティーをやろうとするんです。チャリティーソングをリリースして、その収益を拳銃撲滅運動に役立てる、というものだったのですが、所属のレコード会社からこのアイディアを潰されるんです。「チャートで1位をとることより、重要なことなんだ」と彼は訴えたんですが、銃社会アメリカで銃反対の活動をやるというのは、いろんな意味で困難だったということでしょう。そこでプリンスは、この曲の入ったアルバムを自分の独立レーベルからリリースします。

 

山本:拳銃反対の歌だったんですね!ポップな感じなのに。

 

ーーー曲調としては、親しみやすい感じはあるんですが、思いっ切り銃社会に対してNOを突きつけ、これ以降、レコード会社の言いなりにならずに独自の表現と流通ルートを開拓していくという意味で、プリンス流の静かな闘志が宿った作品でもあるんです。

 

山本:なるほど、静かな闘志!

 

―――山本さんが注目された、女性。彼女は、ノーナ・ゲイといって、銃で射殺されたソウルシンガー、マーヴィン・ゲイの実の娘さんなんです。この映像では、「ノーナが闇組織の指令でDJプリンスを暗殺しに行く。でもプリンスは、拳銃のサインを人ではなくて、天に向けたら「L」、Love Signだろ?と訴える。ノーナは銃を燃やしてコンサートチケットを手にする道を選んだ。」というストーリーになっています。

 しかも、この映像の監督は、アイス・キューブという西海岸を代表する元ギャングスタ・ラッパーで、アイス・キューブもまた、暴力的な路線からの脱却をはかってクリーンな活動に変化している時期の作品なんです。

 

 

 

「オレは闘う、でも怒りに任せては闘わない。みんなに届く親しみやすい楽曲と共に必要なメッセージを届ける」、そんな態度が曲と映像になっていると思ったので、Love Signを選ばせていただきました。

 

山本:おおおおっ!なんと!まさに斜め後ろからのノールックパスに痺れています。そしてこのLove Signのエピソード。拳銃のサインの方向を変えることで「L」…Love Signに変わること。怒りに任せては闘わない。みんなに届く親しみやすい楽曲と共に必要なメッセージを届ける。というところ、とても響きました。これはタイトル通り「愛」のうたですね。

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 愛も怒りもそうしようと思って出てくるものではなく、どちらも衝動的なものだと思います。その湧いてきた衝動に突き動かされてアウトプットとしての行動があって。でも、その根底が愛なのか怒りなのかによって形はずいぶん変わるなあと感じました。闘いという場においてもまさにそれは同じだなあと感じました。ゴール地点が全然違うように思います。

 

―――なるほど、根底の違いで、ゴールが違う。

 

山本:プリンスにとって、どうしても守りたい、実現したい・・・それまで積み上げてきたものよりも大切なものがあると確認しての決断。どんな気持ちだったんでしょうね。プリンスでも、これからどうなっていくか未知への不安があったんでしょうか。でも、自分で決めて選んで進むというところで清々しく誇らしい気持ちになったのではないかなあと想像します。

ここまでのスケールではないですが、自身の転機をふりかえっても「自分が守るべきものと手放すもの」を問いかけて決断したときに重ねてそう思うのかもしれないですね。闘うというのは、ある意味自分の内側の何かと向かい合うことなのかもしれないと感じました。

 

―――深い洞察をありがとうございます。彼の葛藤を含めたそのあたりの部分は、アーティストとして重要な部分だと思ってまして。プリンスが特徴的なのは、「ヒット」に対する考え方なんです。

 

山本:ヒットに対する考え方?

 

―――そうです。彼は、このLove Signのように、音楽が人々に寄り添ったり、世の中を良いほうに前進させることが真の目的だったんですが、それを成し遂げるにはやっぱりヒットを出して、影響力を持たなければならない。だからヒットはゴールじゃなく、「やりたいことをやるために必要なこと」だったようです。そんな価値観がデビューから2年目くらいの時にすでにあったんですね。

 

山本:それは凄いですね。

 

ーーーブランド名であり、本名であった「プリンス」の名前も捨てる。レコード会社副社長の地位も捨てる。大物歌手との共演も断る。山本さんがおっしゃるように「清々しさ」が漂うくらい、固執しないんですよね。なんていうんでしょう、おそらく葛藤や悩みを抱えつつも、やはり「畏れない、囚われない自分」を見せる、それがオレだ、みたいな自意識があったんじゃないかな、と思います。

 

山本:畏れない、囚われない自分。

 

―――あともう一つ重要なのは、楽曲、メッセージが共にアファメーションになっていること。未知の不安の中で、「オレはこうする」を作品の中で先に形にして、自分をその方向に導く、といったところがありますね。Love Signでも、こういう音楽と映像を遺すことで、自分の音楽は暴力や争いではなく、愛を表現する、みたいな。宣言であり、航海図のような。

 

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 山本:おおっ。フィットする言葉が見つからずにありふれた表現になってしまいますが、深く感動しています。「ヒット」が目的ではなく、自分が発信したいメッセージを広く伝え、世界にアプローチする手段だとはっきり認識していたからの選択。葛藤や悩み、不安と向かい合いながらも、敢えてポップな感じで愛を表現していくところに痺れます。ああ、それらの感情があるからこそのアファーメーションなんでしょうね。自分を変えていく、進化させることが世界の変化、進化につながっているという確信でしょうか。「世の中を良いほうに前進させること」が真の目的とありますが、プリンスが考える「良いほう」というのは一体どういった世界だったのか興味深いです。

 

ーーー「自分を変えていく、進化させることが世界の変化、進化につながっているという確信」という山本さんの言葉、そのものだと思います。彼の表現の特徴として、答えを投げずに問いを投げかけ、彼なりの答えは自身の表現や態度で示した。この対話から、そんな彼らしさの輪郭がハッキリしてきたように感じています!

 さて、いよいよ最終曲の3曲目に参りたいと思います。心拍数上げるStand Back、ポップにファンキーに”L”で戦うLove Signと来ました。次はいかがいたしましょう?

 

山本:そうですね。では「癒し」をテーマに1曲お願いできますでしょうか?今のところ毎日元気に今自分が出来ること、そして未来に向けての種まきをしている日々ですが、大変化の波を乗りこなそうと力が入りすぎているなあと感じることがあります。そんなときのおススメがあればお願いします。

 

ーーーでは、こちらはいかがでしょうか?Venus De MIloです。

 

 

山本:これもプリンスの曲なんですか?最初に300ものメニューがあるレストランという表現をされていましたが、今まで聴いたものとはかなり雰囲気が違って驚きました。メロディがとても美しくて、何度も何度も聴いてしまいました。実はこれも人体実験をしてみまして・・・。

 

―――おおお、またもや!ありがとうございます。

 

山本:「癒し」をテーマにお願いしたので、夜寝る前に聴く曲だわと勝手に思い、部屋の明かりを消してベッドに入って準備万端の体制で初めて聴きました。低音で始まり「おおっ!これは心の奥にフォーカスしてくるのか?」と思いきや、軽やかなメロディが流れ出しその美しさが心地よく、いつ歌が始まるのかな?と思っていたら気がついたら終わっていた・・・というのが初回の感想です。

 で、何回か繰り返し聴いているうちに、広い草原でやさしい風に吹かれているような気持ちになってきて光のイメージが湧いてきて「朝に聴きたい!」と思いました。今朝、起きてさっそく聴いてみました。窓を開けて朝の柔らかい光とこの曲を浴びながら、ルーティンのストレッチをするととても心地よかったです。そして、最後のピアノの音で「さあ、整ったからいってらっしゃい」と送り出された感じがして、初めての朝ラン&ウォーキングに行ってきました。

 

ーーー素敵な実験と詳細なレポートに感謝します。僕も「癒し」のテーマで、いろんなシチュエーションを自分なりに想定してみたのですが、今は2020年の5月の最初の日。緊急事態宣言の延長、増大する社会不安、解雇や倒産のニュース、ネット上を飛び交う非難と罵声・・・こういうシチュエーションにおける「癒し」って何だろう?って僕なりに考えたんです。ノイズに対してノイズを返しては、不安は増強されるばかり・・・そんな中でノイズから心を脳を守るには「静けさ」つまりサイレントが必要なんじゃないか?と考えました。このミロのヴィーナスの音の細部までしっかり聴こうと思ったら、まず「静かな環境」に身を置く必要がありますよね?

 

山本:ああ、たしかにそうですね。私も静かな環境で聴きました。

 

―――さらに「言葉」もある意味、癒しの邪魔になることも想定されます。例えばですが、大切な男性がコロナで苦しんでいる時に、「A Man」という歌詞で「想起させてしまう」可能性があります。そういうことが無いように、「静かな環境で、静かなる音をキャッチして、自由なイメージに逃避する」つまり、レスキューとしての音楽として選んでみたんです。

 ですから、山本さんが心地よい朝を迎えるためのマインドセットとして届いたのであれば、もう最高に嬉しいですね。プリンスはおそらく、メジャーなスターとしてはおそらく、ボーカルなしの楽曲をリリースした数はナンバーワンだと思います。アルバム単位でも変名含めて5枚は出していますし、通常のアルバムやシングルのB面、サイドプロジェクト等の中にスッと差し込むこともあって。ですので、もしこの曲が言葉の無い音楽体験のひとつになれば嬉しいです。

 

山本:ありがとうございます。「癒し」について考えを巡らせてこの曲にたどり着かれたプロセスを知って、なんだかじーんとしています。私たちは日々、言葉を使って考えて、言葉を使って他者とコミュニケーションを図っています。だから、言葉が与える影響ってものすごく大きいですよね。特に今はオンラインでのコミュニケーションが日々の大多数を占めていて、いつも以上に多くの言葉が飛び交っているように思います。会えば非言語で伝わる部分もSNSでは言葉のみの情報となっていて、限られたところからたくさんキャッチしようとしているのかもしれません。その分いつも以上に言葉に対して敏感になっているなあとあらためて感じました。

 だからでしょうね。この曲を何度も聴いていくうちになんだかとても「豊かな時間を過ごしているなあ」と感じていたんです。「余白」のありがたみとでも言いましょうか。実は朝のジョギングでもひとつ変化がありました。いつもは途中でつらくなっても最後まで走ることを自分に課していて、歩いたら負けという暗黙の掟(笑)みたいなものが自分にあったんですが、あえて「歩く」という選択をしてみたんです。つらいから歩くのではなく、あえて「歩いてみよう」と。そしたら、走っているときには気づかなかった優しい風やお花の香りに気づいて、さらに聴いていた音楽を止めてイヤホンも外したら鳥のさえずりも聞こえてきて・・・気づいたらふんわり笑顔になっている自分がいました。走っているときの表情とはかなり違っていたでしょうね。「ない」ことによって気づかなかった「ある」を得られたような気がします。

 

ーーー「豊かな時間」素晴らしいですね。いま、音楽の聴かれ方もレコードやCDの時代にくらべて、1曲単位になってしまっているというか、いわゆる即効性のある曲はどんどん聴かれるけれど、この曲のように音楽に向き合って情景が浮かんでくるような曲は、ネットの大海の中で聴かれづらくなっているような気がするんです。アルバムの中で「主役となるヒット曲」ではないのですが、でもそういう曲にもちゃんと意味があって。山本さんがランニングに集中されていた時には気が付かなかった「ある」にも通じるような楽曲かも知れない、といま改めて感じています。ここまで、山本さんにはお忙しい中、3曲のリスニングにお付き合いいただきました。初プリンス体験、全体を通じていかがでしたか?率直なご感想をお知らせいただければ幸いです。

 

山本:丁寧に対話を深めながら新しい世界を知るという非常に興味深い体験でした。初めにプリンスの印象を聞かれたときにWikipedia見に行ったけど全然頭に入らなかったとお話したと思うんですが、今の私はどうなっているんだろうと改めてページに飛んでみました。最初に見たときはただの大量の文字列だったのが、今読んでみると少しずつ言葉が入ってきます。ああ「唯一無二のスタイル」ってああいう感じなのかとか「ワーナーとの確執」・・・Love Signで聴いたお話だなあとか、モノクロの世界が少しずつ彩られていくような感じがしました。今回、プリンスを知って、曲に込められた想いや背景、根底にあるプリンスの愛を知ってからご紹介された3曲を聴くとあらためて沁みますし、もっともっとプリンスの世界に触れて、自分で感じ取りたいと思いました。

 

―――ありがとうございます。

 

山本:そして、もうひとつ。「世界はつながっているんだなあ」と実感しました。プリンスも誰か・・・ここではスティーヴィー・ニックスでしたが他にもたくさんの人々と影響を与え合い、世界の出来事を感じて想いを込めて曲を世に出す。それを多くの人が聴いていて、今回、こうやって私にも紹介してくださいました。お互いに新たな気づきがあって、それぞれがつながっている人たちにまた何らかの形で広がっていく…そんな連鎖を感じました。連鎖の根底には「世の中をよりよくしたい」そして「自分自身をよりよくしたい」これがあるからこそつながっていくのかなと、そんなことを感じています。

 

ーーーあああ、それは嬉しいです。録音された音楽や記録された映像は「変わらない」はずなのに、こちらの知識、経験、機会、関係などによって、「違って聴こえる」「違って見える」ってことはあるじゃないですか。彼はそういった「気づくトリガー」をたくさんしかけて「積極的に感じとる能力」であったり「偏見に惑わされない能力」であったりを引き出そうとした人なんだな、と思います。

 そして山本さんおっしゃる通り、世界が拡大していく醍醐味みたいなものを感じます。なぜ僕がいま、山本さんとご縁があるのか?というと、僕のツイッターや記事を読んでくださり、それに対してnoteで感想を記してくださったことがきっかけなんですよね。直接的な会話ではなかったけど、お互いの作品や発信で、会話したようなところがあったと思うんです。それまで全く別の世界に生きていたのに、SNSを媒介としてご縁ができて、プリンスの芸術によってさらにご縁がワンステージ上がっていく。そんな貴重な経験をさせていただいています。山本さんの実験精神であったり、ホワイトボードですぐに形にしてくださったり、そういう人としての姿勢からも学びがあって。感謝しています。

 

山本:「気づくトリガー」をたくさんしかけて というフレーズ、めちゃくちゃいいですね。昨日、講師や先生など教える立場の人向けのオンラインワークショップを開催したのですが、そこでも「教えないで教える」というテーマでディスカッションをしたところでした。発信側ってついつい相手の肩を揺さぶって「これ大事!」と伝えたくなってしまうんですが、それをやっちゃうと逆に相手に届かないというか。伝えた相手が当事者として自ら手に取ることで、そこに意味が生まれて変化や成長につながっていくんですよね。仕掛ける側としては、相手を信じて待てるかどうか。そこが大きいように思います。相手を信じるというのは、相手を信じる自分を信じるということでもあって・・・なんだか言葉遊びみたいになっちゃいましたが、その姿勢を貫き通しているプリンスにますます興味が湧いてきました。師匠と呼びたいです!

 そして、なんとなんと!noteにほぼ日での糸井重里さんと二重作拓也さんの対談の感想を備忘録がわりに自分が感じたこと書き残しておこうとひっそりと記事をアップしていたのですが、まさかご本人に届いていたなんて思いもしませんでした!それが「今」につながっていることに衝撃を受けております。あの対談を読んで「おもしろい!」と思ったこと、読んで感じたことを書き残しておこうと軽い気持ちで蒔いた種が忘れたころに思ってもみない形で芽を出していたという・・・「人生って、ご縁っておもしろすぎる!!!」と震えています(笑) 

 表現する・伝える・行動するということは自分と世界をつなげ、自分も世界も広げて深めていくための大事なアクションだなあとあらためて感じました。こちらこそ、身体を通して気づき学び、対話を通してさらに気づき学ぶ機会に深く感謝しています。

 

ーーー対談を読んでくださり、ありがとうございます。僕もあの時、糸井さんにいろんな角度から引き出していただき、気づかせていただいたんです。なんか昔、近所の憧れのお兄ちゃんが優しくキャッチボールの相手をしてくれたような。このプリンスの3曲もそうですが、彼が全く違うタイプの楽曲をつくったのも、人間の多様性にアクセスするためだったんじゃないかな?と思います。大切なことを、いろんな形で、優しい変化球も交えながら、受け取りやすいように。ですから、ほぼ日の対談、そしてプリンスの音楽を通じて、山本さんとも素敵なキャッチボールができたような気がして、非常に楽しかったです。これからのご活躍も、応援しています。どうもありがとうございました!

 

山本:私もとても楽しくエキサイティングな対話の時間を満喫させていただきました!2020年の今だからこそのゴールデンウィークならぬパープルウイーク、最高でした!どうもありがとうございました。これを機にプリンスをもっと聴いてみようと思っています!これからもおすすめなどをぜひ教えてください!

 

―――わかりました、紫大学のいたるところにそっとトリガーをおいておきますね!

 

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プリンス 7 つの質問  14 愛里.A.Sugawara

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1.あなた自身を紹介してください。 

 

愛里.A.Sugawaraです。天然石ビーズを用いて、その方のエネルギーを表す『世界でたったひとつのブレスレット』を作っています。そのブレスから浮かぶ言霊(メッセージ)を書いています。

プリンスの楽曲を聴いて、そこから浮かぶ世界を詩やストーリーとして文章におこす『プリンス曲妄想文』、占星術の観点から、プリンスをいう人物を探ってみる『ホロスコープから見るプリンス』も書いています。ハーブのブレンドを日常的に楽しんだり、読書と映画鑑賞も、昔からかなり好きです。

 

2. あなたはどうやってプリンスファムになったのですか? 

 

高校時の親友が、テープに録音した『Purple Rain』を貸してくれたのがきっかけです。

その時、はじめて聴いたはずが、『Let’s Go Crazy』や『When Doves Cry』は聞き覚えがあって。ヒットしていた当時、TV等から流れてきていたのを聴いて覚えていたようです。

 その直後、TV放映の『ヌードツアー』で、髪を風に靡かせ、ステージの端から端まで駆け回りながら、歌い踊るプリンスを観て、完全にはまりました。小柄な体躯から放たれるエネルギッシュさ。どこか両性具有的にも感じられるセクシャルな魅力。もちろん、録画したテープが擦り切れるまで繰り返し観ました。

 

 

3 .あなたの最も記憶に残る「紫の経験」は何ですか?

 

 私の中学時代、両親が不仲になり、母親から、父親に対する諸々のこと、私の祖父母との話も聞かされていたのもあって、ただでさえ難しい思春期の頃、相当複雑な気持ちを抱えていました。そして、とうとう高校入学の直前に離婚しました。

 プリンスに出逢い、好きになったのは、この直後でした。プリンスを好きになって、過去作品を遡って聴いていると、例えば、『Something In The Water (Does Not Compute) 』のあの叫び声を聴いて、「どうにも叫ばずにはいられない人が、ここにもいる…」と、(勝手に)シンパシーを抱きました。そして、その胸の内のどうしようもない感情こそが、楽曲を生み出すエネルギーに変換されているようにも感じられました。

 

 プリンスの半自伝的のように謳われていた、映画『Purple Rain』もビデオで観ました。やはり、近いものを感じずにはいられませんでした。それは、実際に起きていたこと、というより、自分の中で感じていたことに対してです。両親はその後、それぞれ再婚し、高校3年の始業式の翌日、私の父は自殺未遂をしました。

 月日は流れ、20代半ば頃。久々に映画『Purple Rain』を観た時、【父親の自殺未遂と取り乱すプリンスの姿】に、ものすごい強烈な衝撃を受けてしまいました。人間は、あまりにも辛い出来事があると、忘れることで心を守るというようなことを言われますが、まさしく、それでした。本気で、すっかり記憶から抜け落ちていました。映画を観て、【追体験】をした時の方が、ショックが大きかったのも、また興味深いものでした。当時は、まともにショックを受けないように心をガード・プロテクトしていたのでしょう。私の感覚では、心を凍てつかせていた。感じないように、麻痺させていた。家庭内で次々起きる辛い出来事に傷つかないように。そんな心を麻痺させていた状態でも、プリンスの音楽には感じ入るものがありました。喜びであったのは確かだし、生きていられたのも、プリンスの音楽があったからだと思います。

 しかし、その後、歳を重ねるにつれ、「プリンスに【依存】しているのでは…?」と感じるようになりました。震災以前の、とある出来事をきっかけに、周りで起きていること云々ではなく、もっと、【私】にフォーカスしはじめてから、プリンスの楽曲から離れるようになっていました。何故か、手が伸びなかった。聴く気が起きなかった。もちろん、新譜も買いませんでした。とにかく食指が動かなかった。全く聴かない状態が3年くらい続いていて、ある時、「プリンスから離れよう」と思い、最も素敵だと感じるジャケットのCD1枚を残して、全て断捨離しました。2015年のことです。

  その直後に参加したイベントで大音量で聴いたプリンスの楽曲は、ただただ、とんでもなく格好よく感じて、「プリンス大好き~!!」と、プリンスに対する新たなる純粋な気持ちが、自分の中に湧いてくるのを感じました。以前の【依存】的感情とは別物になったと思います。

 

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 そして迎えた、2016年4月。断捨離した頃から、「この日が近い」ともしかしたら、感じていたのかも・・・とも思いました。その前に、私の中で、一旦、けじめをつけておく必要があったのかと。なので、ものすごく単純に彼を想うことが出来ました。泣き暮らすのではなくて、「プリンスの残してくれた楽曲で、楽しんでいく」と。これは、決意であり、私なりのプリンスに対する感謝の表し方でもあります。そして、それは、私自身の人生に対しても、前を向いていく気持ちをもたらしてくれています。プリンスという人、プリンスの楽曲と共に、私という人間の心情的な変化は起きてきました。これが、私の紫な経験。紫な人生です。

 

4. あなたのトップ3のソウル・ソング(重要曲)は何ですか? なぜあなたはそれらの曲を選んだのですか?

 

『Love… Thy Will Be Done 』

マルティカのアルバムで聴いた時から、何故か、とてもとても大好きな曲です。理由はわかりません。とにかく、心が震える…としか。強いて言えば、神聖なる大いなる存在に見守られているような安心感…。プリンスが目の前で1曲歌ってくれるとしたら、迷うことなく、この曲をリクエストします。

 

 

 
『Until U’re In My Arms Again』

プリンスの曲の中で、一番、壮大な宇宙を感じる曲です。元はただの魂(ソウル)である私たちが人間となって、この地球に降り立ち、再び出逢えることの奇跡。その喜びを、その美しさを、存分に感じさせてくれる曲です。

 

 

 
『Te Amo Corazón』

最初、聴いた時は、歌謡曲的な雰囲気にだいぶ驚きました。前述した『プリンス曲妄想文』を書きだしたきっかけとなった曲です。何故、この曲だったのか?何故、そんなものを書こうと思ったのか?もう全く覚えていないのですが、これを書くことも、私の心や私自身が解放されていくことのひとつともなっています。そういう意味でも、私にしあわせをもたらしてくれた曲です。

 

 

 

 

5. 素晴らしいアーティスト/ミュージシャンをプリンスが私たちに紹介しました。あなたのお気に入りは誰ですか? 

 

シーラEです。よくぞ、あの才能を見抜き、フロントウーマンとして世に出るよう促してくれたものだと思います。もちろん、以前から彼女の素晴らしさは明らかなのですが、(これは、プリンスと共演を果たした全ての人に当てはまることなのですが、プリンスのステージにおいては、それらがあたかも当然のように感じられてしまいます)。

 

 

 改めて、シーラの凄さを思い知らされたのは、2016年のBET Awardsのトリビュートでした。それは、まるで、プリンスのステージで。数えきれないほどプリンスと共にステージに上がり、(リハーサル等を含めればもっと)プリンスのサウンドを熟知…というか、完全に血肉となっていて、歌っていても、演奏していても、ダンスをしていても、そのステージ全体に、「プリンスの【血】が流れている」としか感じられませんでした。あんなにもプリンスを感じさせるステージになったのは、シーラだからこそ、だと思います。

 生前からのふたりの絆。プリンス亡き後も、シーラのプリンスへの、尽きることない永遠の愛を感じずにはいられません。

 

6. プリンスの音楽は人生の教訓とメッセージでいっぱいでした。プリンスがあなたに与えた最も重要なものは何ですか?

 

『Starfish And Coffee』の

If u set your mind free, baby

Maybe you’d understand

この歌詞です。

人間の思考は、制限や決めつけでいっぱいです。だからこそ、その狭い視野からではなく、常にマインドを自由に泳がせるようにして、もっと想像力を働らかせて、相手や状況を把握し、理解しようとすること。生きていく上で、大切なことだと思っています。

 

7. 次世代にプリンスを紹介する方法は?

 

2019年のことですが。『4ever in my Life』という「プリンス・ラブ・プロジェクト」を一人で勝手に立ち上げました。どんなに待っていても、新譜が出ることも、ライブが開催されることも、残念ながら、無い。だとしたら、プリンスで楽しむ機会を自主的に作るしかない。活動内容としては、『プリンスが残してくれた楽曲で楽しむこと』なのですが、そこから派生して、『プリンス・ラブな活動をしている人たちを応援する』等も含まれます.。肝心な、後世に伝える方法としては、大の大人たちが、揃いも揃って、いつまでもプリンスプリンスプリンスプリンスと大騒ぎして楽しんでいる姿を見せることでしょうか? 「何がそんなにいいの?」と思わせることが出来れば、後は、プリンスの素晴らしさに、格好よさに、気付いてしまうのは時間の問題かと思われます。

・・愛里・・ (@airi_smile) | Twitter

食わず嫌い王子 05 金城 有紀/コミュニティーナース

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食わず嫌い王子 ~あなたの殿下がここにいる!かも?~

ヨーロッパやアメリカでは「現代のモーツァルト」として高く評価されリスペクトされる一方、日本の一般層には「プリンス?誰それ?」状態。そんな時代に、究極のお節介企画、『食わす嫌い王子』。プリンスをあまり聴いていない方、存在自体知らない若い世代に、「殿下の音楽は届くのか?」実験的インタビューをここにお届けします。

05 金城 有紀さん/コミュニティーナース

ゆきまる🏝OKINAWA☀️ (@SHUMMEISM) | Twitter

ーーーこんにちは、紫大学です。企画へのご参加、ありがとうございます。まずは金城有紀さんの自己紹介をお願いします。

 

金城:わー、こんにちはー!ドキドキです。はい、私、「ゆきまる」こと金城有紀(きんじょうゆき)と申します。沖縄に生まれ、沖縄に愛し愛されたピチピチの34歳。愛しい愛しい8歳の息子とふたり、今現在も沖縄で仲良く暮らしております。職業は「病棟にいないナース」コミュニティナースとして地域をうろうろしています。

 

ーーーありがとうございます。お母さまとしてしっかりお子さんを育てながら、医療者としても活躍されているんですね!「コミュニティーナース」というお仕事にとても新鮮な響きを感じたのですが、病棟にいないナースとして、具体的にどのような形でご活動されているのでしょうか?

 

金城:はい、コミュニティナースの働き方としては、本当に100人100色なので「私の場合は・・・」に限らせて話をさせていただくとですね、例えば、村の公民館に行って、介護予防教室をしたり(その際、血圧を測ったり、健康相談を受けたりします)村の乳幼児検診に出たり、80歳以上の高齢者の皆さんとバスに乗って、ピクニックにいったりしています。あとは、公設市場の夜市で、市場のお肉屋さんで購入したお肉を七輪で焼きながら健康相談に乗る「七輪ナース」をしたり、、、笑 屋台を作って古民家でカフェを開いて健康相談にのったり、、、「健康」に限らずですが、地域にこちらから出て行って、地域の方々と交流する、という感じでしょうか?やってる私自身、うまく言葉にできない仕事をしています。

 

 

ーーーなるほど、まさに生活の動線上のナースですね。七輪ナースに、体操に、カフェ!だから話しかけやすいお人柄なんですね。興味深いです。ふだん好まれる音楽や愛されている音楽はありますか?

 

金城:好きな音楽。流行りの音楽はあまり聴かないですね。洋楽はほとんど聞いたことがなく、一度めちゃハマったことがあるのはBilly Joel のWe Didn't Start the Fireという曲です。

  ひとりの歌手、というか一つの曲、にものすごいハマることは多いです。チャゲアスの、しかも、YAH YAH YAH ぐらいまでの曲が好きですね。歌詞も含めて。尾崎豊、、、とか、、BOØWYとか、、中島みゆきとか山口百恵とか、、尾崎豊だと「失くした1/2」というあんまり有名じゃないんですが、これが一番好きです。あと「COOKIE 」とか。BOOWYだと「DREAMIN'」。

 あ!クレイジーケンバンドはファンクラブにもはいっていました(笑)気合を入れる朝は映画「プリティウーマン」の曲をかけて身支度をします。基本「色々あったけど明るく気丈に立ち上がる系」の曲が好きですね。

 あとラテン系の音楽はずっと踊ってられます沖縄民謡も含め踊りたくなる曲は無条件に好き、という体が勝手に踊ってしまいますね。うちなーんちゅなんでしょうね(笑)ああ、槇原敬之宇多田ヒカルも大好きです。あ、ウルフルズも好きです!困った、色々出てきちゃうなー。音楽は聞かない方だと思っていましたが、結構聞いているなーと思いました。流行りにのれていないだけで(笑)

 

ーーーいいですね、ジャンルやスタイルにとらわれることなく、次から次へとどんどん出てくるのが楽しいです。音楽と共にあったのが凄く伝わりますし、教えてくださったタイトルも検索してみたいと思いました。

 そして、「踊りたくなる曲は無条件に好き」の言葉に、沖縄を感じてしまいますね!この企画では3曲をおすすめするのですが、この会話から最初の1曲は、「金城さんが踊りたくなるかどうか?」を基準に選んでみようと思うのですが、いかがでしょう?

 

金城:めっちゃステキです♪よろしくお願いします。踊りたいです♪

 

ーーーではでは、これはちょっとした変化球なのですが、こちらをご紹介します。Ryuichi Sakamoto feat. Jill Jones - You Do Me 

 

 

金城:めっちゃ良き!です!ありがとうございます!オープニングでとても引き込まれました。そのあと、女性にとてもセクシーさを感じていたのですが、うちなー音階が入った時にDNAがざわつきましたね!感情としてはうれしさ。でしょうか。そのあとは女性のことが他人事ではなくなりました。セクシーさプラス力強さ、を感じました。なんでしょうね。最後のフェードアウト感に「もっと聞きたい!」と思ってリピートして聞きました♪

 

ーーー良かったです。「変化球」と記したのは、これはプリンスではなく、坂本龍一さんの曲なんです。ですが、ボーカルの女性、ジル・ジョーンズはプリンスがずっと育ててきたファミリーの一員で、プリンスの映画やPVに出たり、彼のプロデュースでソロアルバムも出しています。そして何より、坂本龍一氏のセンスが凄い!沖縄民謡とファンクの奇跡的な融合、みたいな。

 

 

金城:あの坂本龍一さんの曲なんですね!

 

ーーーそうなんです、坂本龍一さんは、音楽家として歴史に残る存在であることはもちろん、沖縄音楽の魅力を世界に伝えた功労者でもありますよね。沖縄民謡をご自身のサウンドと見事に調和させつつ、でも「誰も聴いたことがないような音楽」になっててビックリ。

 

金城:たしかに、こういうのは初めて聞きました。思わず私も踊っちゃいました(笑)

 

―――僕も沖縄の友人の結婚式に出たことがあるんですが、みんなで沖縄民謡で踊って、ライブみたいに大盛り上がりで終わって、なんともいえない興奮を味わったことごあるんですが、沖縄の皆さんのあの肉体性というか、身体文化は、もう生活の中で当たり前にあることなんでしょうか?東京だとカラオケなんかでは盛り上がるけど、「さぁ、みんなで踊ろうぜ!」とはなかなかならないもので。

 

金城:もちろん人にもよるとは思いますが、踊るのは嫌いじゃないと思いますね。結婚式も「かぎやで風」という踊りではじまり、テンポの速い「カチャーシー」をみんなで踊って終わる、というのが定番になります。高校生の頃の放課後の過ごし方も、那覇よりも海が近いところは、ビーチに行って、誰かが三線を持ってて、誰かが弾けて、誰かが歌えて、誰かが踊れる、みたいなのは普通だと思います。私は音楽は何にもできませんが、カチャーシー(定番の踊り)は同世代では上手い方だと自負していますね。

 

  あと看護師として高齢者のお宅に訪問することがあるのですが、寝たきりのおばあちゃんでも、民謡を流すと踊り出したりして「起きれるじゃん!」みたいなコントのような場面も何回も見たことがありますね。リハビリの現場でもそう。「踊れはするけど、歩けない」というコントのような本当の話がたくさんあります。やっぱり「血が騒ぐ」的なものはあるように思いますね。

 

ーーーそれはめちゃくちゃ興味深いです。僕は医師でもあるんですが、「寝たきりの沖縄の高齢者でも沖縄民謡で踊れる!」「リハビリで踊れるけど歩けない」って、これ、脳の中に何十年ってかけた神経回路ができてるってことですから!

 何らかの原因で健康が損なわれたとしても、長年生活の中にある音楽がその人の生活を回復する、そんな可能性があるわけです。いやー、凄いな、スタートから面白いです。

 

金城:ホント、おもしろいですよね。背中曲がったおばあちゃんが音楽が鳴り出すとシャンとして踊り出して、踊り終わったら、普通に(曲がってる)に戻ってる、、、とか。介護福祉の現場では、もう毎日がコントのようです。

 

ーーー毎日がコント!それ、沖縄の現象として学会発表すべきレベルの話ですよ。そしてリハビリや介護の場面でも「その人の音楽療法」と組み合わされるべきです。プリンスで始まったお節介企画が、凄いところまで来てしまって、僕自身驚いているんですが・・・。

 

金城:学会発表したいですね!データ集めます!

 

ーーーぜひよろしくお願いします。さて、この流れで?2曲目に行ってみたいと思います。こんなのが聴いてみたい、といった希望はございますか?

 

金城:そうですね、もっともプリンスらしい曲、ってありますか?これぞ、プリンス!的な。聞きたい曲って、その時の感情や一緒にいる人で変わったりすると思うのですが、もっともプリンスらしい曲、聴いてみたいです!

 

ーーーでは、2曲目はこちらで参りましょう。もっともプリンスらしい曲かどうかはわからないんですが、代表曲の1つであり、金城さんとの会話の中から、閃いた曲がこれでした。The Most Beautiful Girl In The World。

 

 

金城:すごくステキな曲ですね、もうホント率直な感想になってしまいますが、一度どこかで聞いたことあるけど思い出せない懐かしさを感じました。そしてなんだろう、私は母を亡くしているのですが、母がいた時に感じたような心強さを感じる曲です。安心して前進できるような、そんな感覚を持ちました。

 

ーーーそうでしたか・・・お母さまの心強さ、安心感を思い起こされたんですね・・・。なんとも言えない気持ちになります。ありがとうございます。

 

金城:こちらこそです。このビデオも素敵ですね。いろんな人が出てきて。

 

ーーーこの映像を撮影する前にプリンスは広告を出したんです。「世界でいちばん美しい女性を募集します」って。それで応募して選考に残った女性たちに「自分の夢が叶った映像」を撮ってあげたんです。このビデオは、それぞれの女性が「自分の夢の映像」を自分で観ているところを撮影したドキュメンタリーになっていて。

 

金城:ドキュメンタリーなんですね~。

 

―――はい、コメディアン、歌手、結婚と出産、デザイナー、教育者・・・自分が心から好きなことをやっている時の表情、それを見ている時の表情を記録したんです。「心からやりたいことをやってる女性」、それが「世界でいちばん美しい女性」なんだよ、っていうメッセージになっているんです。

 

金城:なるほど〜。だから希望に満ちたような、肯定されているような感じを受けたのかもしれません。なんか一歩を踏み出せるような、勇気づけられるような・・・。プリンスすげぇ!この映像、改めて見てみると、ホント、泣けてくるくらい勇気づけられますね。私はコミュニティナースとして写真も撮っていて。フォトグラファーでもあるんです。

 

―――おおお、フォトグラファーも!多彩だなぁ!

 

金城:授乳中のお母さんたちって、ワンオペで育児をされていたり、睡眠不足だったりして、一日中こどものために一生懸命に動いているのに、社会からは取り残されたような感覚を感じたりして。しかも6ヶ月近くも3時間に一回とかの割合で昼夜を問わず授乳しているのに、その時の写真がなかったりして。あってもスッピンで寝不足で家着でボロボロな感じだったりして。だけど、私は授乳中のお母さんって本当に美しい存在だと思っていて。その時を残すお手伝いをしています。

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「今は終わりが見えなかったりするかもだけど、母としても女性としても、今とっても美しいよ」って、気づいて欲しくて。だから、プリンスもそんな感じに思ったりしたのかなーと。

 

ーーーそれは凄いリンケージです。プリンスは世界一美しい女性を募集した。でも彼が伝えたかった美しさとはcome from inside、つまり内面から来る美しさだった。見た目の美しさが到底及ばない次元のものです。

 ただ、言葉では言えちゃうじゃないですか、「内面が大切だ」とか。それを実際にセットを組んで、映像に撮って、本人に見せて、「あなたは美しい」って言葉を使わずに伝えてる。そこがこの作品のすばらしさだと僕は思うんです。コミュニティーナースである金城さんも、授乳中の親子に美しさを見出して、それを言葉じゃなくて写真と撮影という形で伝えている。

 

金城:ですです。めっちゃおこがましいですが、プリンスにそうゆう共通点を垣間見ました。私はこの「授乳フォト」の撮影は「ケア」の視点でも撮っているつもりでいます。写真を撮る時はわざわざ「看護師」は名乗りません。あくまでも主役はお母さんで、撮影の一時はお母さん自身の美しさとか強さとか(決して強要する強さではなく)が感じ取れるような写真に仕上がるよう心がけています。

 

―――お母さんが主役。素晴らしいコンセプトですね。

 

金城:音楽や写真、アートは、本人さんの持ってる力を引き出すパワーを持っていると思っています。プリンスにも同じようなナーシングマインドを感じました。エンパワーメントのチカラ、信じる力、というか。

 

ーーーおっしゃる通りで、プリンスは引き出すパワーが半端ないです。ロージー・ゲインズという、めちゃくちゃ歌が上手い女性シンガーがいるんです。

 彼女がプリンスのバンドに加入した時、プリンスは彼女にキーボードを弾かせようとするんです。でも彼女は「私、キーボード弾いたことないから・・・」って消極的になっていたら、「できるさ、キミなら、きっとできるよ」って無茶振りされて、すぐにツアーに出た(笑)

 

金城:なにそれすごい!

 

―――だから、金城さんのお話を伺っていると、本人の力を引き出すって、「その人を信じる」とセットなのかも?って思いました。

 

金城:そうですね、なるほどそうかも。そういう意味では、「信じてる」かもしれないです。でも、今の今まで、私は人を信じれない人だと思っていました。けど、逆にプリンスの話を聞いて、「あ、私って人のことめちゃめちゃ信じてるんだ」と気づかされました。ちょっと不思議な感覚です。

 私は人を信じることに対してすごい恐れている時があります。なので、全部自分で抱え込んでしまったりとか・・・。プリンスのようには信じきれてないのかもしれません。大切な人、身近な人ほど、信じるのを恐れている?と感じる時があります。プリンスはそのあたりはどうだったのでしょうか?

 

ーーー金城さんが、お母さんたちの授乳の写真を撮るとき、「その姿こそ美しいんだ」って信じていると思うんです。被写体のお母さんがそれを信じてなくても、金城さんはそれを信じて、美しさを既に見つけてしまってるような。

 

金城:それはめっちゃわかります!その自信はすごいあります!

 

―――そう考えると、人を信じるって、その人のことを信じてる自分を信じる、ってことなんじゃないか?って。プリンスをみていて感じる瞬間があるんです。彼の最初の主演映画、パープルレインを撮影してる時も、プリンス以外は、この映画は失敗するだろう、って思ってたらしいんです。でも、共演者いわく、「ご本人は1000%信じきってた」らしい。

 

金城:えーーー!1000%ですか!!!

 

―――それだけ、もてる時間、スキル、情熱、エナジー、スタミナなど、全部を投入したんじゃないでしょうか?信じられるところまで、真剣に本気でやった。だから「俺が見つけてきたやつ」は信じられる。逆に言えば、自分を信じずに、他人を信じるということはなかったのかも知れません。

 

金城:それ、めっちゃわかります!「自分が見つけた人間」はすんごい信じられます。私、自分に自信はないけれど、そういう意味では自分が「これだ!」って思ったことは、周りにどう言われても突き進めて、そういう意味ではすんごい「自分を信じてる」っていえると思います。

 みんながどれだけ「給料も安定してるし、病院で働いてこそ看護師でしょ」って言ってても、「いや、これからは絶対地域だ!」っていう自信?みたいなものはブレたことないんです(笑)これなんだろう?結局はめっちゃ自分を信じてるということでしょうか?自分の未来を信じてる?でも、めっちゃプリンス親近感です。超勝手ですが。すんごいわかります!なんかすごいワクワクしてきました。

 

ーーー僕のほうも、「信じる」について、今改めて考えるきっかけになっています。金城さんは、何があろうともコミュニティーナースとしての道を歩むことに迷いがない。他はいくらでも譲るかも知れないけど、ここだけは、この領域だけは、誰に何を言われようが譲らないし、譲れない。もしかしたら、「自分を信じる」とは、自分全体を闇雲に信じることではなくて、コミュニティーナースとして輝いてる自分を信じている。そんな感じではないですか?

 僕は、僕よりも詳しいひと、できる人、凄い人について、全く気にならないんです。他の領域では。むしろ仲良くなりたいし、学びたいんですね。でも、格闘技医学だけは、またプリンスをボジティヴに伝えることだけは、「勝手な使命感」みたいなものがあるんです。「俺が先頭になるんだ」という気持ちも全く無いわけじゃないですが、それよりももっと強いのは「それらが間違った形で行使されるのはまずい、だから僕がやらなきゃ」みたいな使命感です。それを勝手に背負ってる。勝手に、です(笑)だから、金城さんがその景色が見えてる、ってのは、すごくわかるし、それこそプリンス的な気がするんです。

 

金城:わ!わわわ!まさに!めちゃそんな感じです!

 病棟で働ける採血がめっちゃ上手なナースはたくさんいると思うし、なりたい人もめっちゃいると思っていて。そこはみんなに任せるよ、と思っています。だけど、地域看護は。私が多分、誰よりも実践できるし、実践する自信があるし、それが世の中を、沖縄を、変えていくことにもなる。やるぞ。それは私にしかできない、と思っています。その感覚がプリンス的だとしたら、めっちゃうれしいです!

 

ーーーもちろん迷いもするし、失敗もするけど、私はこれをやる、沖縄を変える、世の中を変える、という意志をもてるというのは素晴らしいことだと思います。それができるかどうか、の結果よりも、そこを目指す、意識するというのは、自分という小船を、正しい方向に導くような気がします。いよいよ、ラストの3曲目になりますが、どのような楽曲にいたしましょう?

 

金城:新たなスタートをきる際にオススメの曲などありますでしょうか?今、新しいことをやろう!と思っていて。

 

―――では、こちらはいかがでしょうか?Can’t Stop This Feeling I Got

 

 

金城:めっちゃいいですねー。ノリノリになりました♪息子も踊り出して、私も踊り出して、、、♪そのままチャンネル登録して、連続でプリンスの世界を楽しませていただいています。ありがとうございます。なんか、プリンスの曲は一曲一曲が短編の映画のようですね。曲そのものにストーリーを感じるというか、、、すごいパワーです。

 

ーーー息子さんまで!嬉しいことですね。金城さんが「新しいスタートを切る」とおっしゃって。きっと何か前向きなイメージが浮かんだのかな?なんて思いまして。「このフィーリングを止められない!」ってタイトルを選んでみました。

 

金城:ありがとうございます。

 

―――この曲の途中で、語りの部分があるでしょう?Padon Me 4 living....から始まるんですが「生きてて悪かったな、でも、これがオレの世界だ。お前にオレを変えることはできない。変えなきゃならないのは・・・俺たちのブレイン(考え方)だ」ってメッセージがあってですね。金城さんが「コミュニティー・ナース」という使命を通じて、沖縄を、世の中をよりよくしていこう!と思われる「志」に通じるものがあるなぁ、なんて思ったんです。

 

金城:そうですね、この曲を何度か繰り返し聴くうちに、曲の感じがワクワクと、良い意味でのプレッシャーもかけてもらった感じもしました。「世の中を変える!」というでっかい志はもちろん抱えてる、やること、やれることは見えているんだけれども、社会にとっては「早熟」にならないだろうか、と。

 COVID19の影響下で、社会のベクトルの方向がグンっと変わった感じがしていて。強制的に社会の舵がきられて、私にとってはチャンスだな、と思う反面、社会的な「成熟」にはなっていないことも感じていて。今まで「早く変わってほしいな」を見守りつつ、自分のできることを、できることから、できるだけ実行していましたが、それが全然予想してないカタチで望むように舵がきられたけれど、でも、それはそれで社会としては良いのかな?と少し不安になったりもして。Can't Stop This Feeling I Got を聴きながら、ワクワクと、ちょっとした、焦り?に似たような不安?も感じました。

 新しくスタートするときはそんな気持ちはつきものなのかもしれませんが、ちょいビビっているのでした。「焦り」、というか、「畏怖感」ですかね。テンポが良いからなのかもしれませんが、ワクワクの中に、ちょっとドキドキのエッセンスも感じたんです。

 

ーーーそのご感想は、逆にこの曲の本質に近いかもしれません。というのも、「こんな素晴らしいフィーリング、伝えたい」って思ったのは誰か?といえば、それはもうプリンス本人なのですが、じゃあ、彼想い描く理想の世の中にすぐなるのか?と言えば、答えはNOなわけです。曲にして、レコーディングして、発表して、すぐにそうなるようなら、それは大した理想でも志でもないわけじゃないですか。だから、金城さんのおっしゃる不安というのは、ついて回ると思うし、プリンス自身も、そう簡単にいくことじゃないってわかってたからこそ、自分を鼓舞する意味でも「このフィーリング」をサウンドとして記録しておきたかったように僕は思うんです。

 例えがあれですが、夏のキャンプの肝試しで、明るい歌を歌いながら墓地の暗闇を歩くような感覚、というか。

 

金城:そうそう、そんな感じですね。ワクワクとドキドキ。でも、一歩踏み出す、やらずにはいられない、希望を持って。という感じです♪

 

ーーー初めてこの曲を聴いていただいて、「ただ明るいだけの能天気なロックじゃない」って理解された金城さんの感性には正直驚きました。彼の世界はいつも、暗闇の中の希望だったり、制約の中の自由だったりを描くところがあるので。今、4月下旬のコロナ問題の真っただ中で、どんなフィーリングを得るのか?絶望するか、希望を見つけるか?そこは問われてるような気がします。1990年発表の楽曲なのに、金城さんとの会話でこの曲に新しい意味が見つかった気がします。

 

金城:いや、ホント、今まさに必要な音楽がプリンスのような気がしています。

 

ーーー金城さん、今回は、食わず嫌い王子にご参加くださり、誠にありがとうございました。プリンスファミリー関連作品1曲、プリンスの楽曲2曲を聴いていだきながら、いろんな対話をさせていただきました。プリンスの世界に触れてみた、率直なご感想を頂ければ幸いです。

 

金城:率直な感想。ホント、率直な感想になりますが、「あ、出逢うべくしてプリンスに出逢ってしまったな」と思いました。なんだか、逆になぜ今まで私がプリンスに出逢ってなかったのかが不思議なくらいでした。曲もそうですが、もっともっと彼自身について知りたいな、と思っています。曲自体にも幅があり、なんでもできる感じが伝わってきます。チャレンジングな姿勢、なんでもやってみようという姿勢と、僕はなんでもできるはずさ、という自信、、、というか。

 今の社会や、今の私にとってもものすごく必要な音楽のような気がしています。これも直感的なのですが、この企画自体がもプリンス的、というか。「自分にしかできないコトをやる」「他の誰かがやっているコトは他の誰かがやってればいい」的な。それを見失いがちになりそうな今だからこそ、今のこのタイミングでこうしてお話ができたこと、ホントにありがたいなぁと思っています。

 やれることをやっていく。自分を信じて。プリンスの曲を聴きながら、ちょっとwithコロナ時代以降のコミュニティナースでの働き方を考えてみようと思いました。すんごい後押ししてもらえそうです。この3曲だけでもすんごいパワーと気づきをいただきました!

 

―――僕も、この対話から、沖縄文化の素晴らしさはもちろん、今後の医療やリハビリのあり方のヒント、美しさや信じること、不安と希望、そして自分らしさ。いろんなテーマが見つかったように思います。プリンスがヒットを連発していた時期や、ライヴをガンガンやってた時期は、ある意味、影響を受けやすいわけですけど、リアルタイムから数年が経過してもなお、「出逢いのきっかけ」と「ストーリー」さえあれば、時と場所を超えて人生応援歌としても機能するんだということがとてもよくわかりました!

 そして、金城さんという新しい生き方を目指す女性と、プリンスの生き様がシンクロして、プリンスを通じた仲間というか同志のような気がしてくるから不思議です。これからもますます金城さんらしく、フィーリングを信じてBeautifulに沖縄を走ってくださいね!ありがとうございました!

 

金城:ホントに素晴らしい時間をありがとうございました!「プリンス」の存在からたくさんの話題になって、しかもそれが全部繋がっていて。プリンスは今ここ、にはいないけれども、確実に私たちに出逢いとつながりと未来を与えてくれたわけで。なんか「生きてるってなんだろう〜」って思いました。この出逢いを大切に、これからまだ出逢ってないプリンスと出逢っていきたいと思います。ありがとうございました!

 

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プリンス 7 つの質問  13 原 雅隆

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1.  あなた自身を紹介してください。

 

原 雅隆 日本で佐賀県出身です。職業は映像を撮って編集しています。趣味は本物に触れること、芸術、音楽、食べ物、人間に接して感性を磨くことです。

 

2.  あなたはどうやってプリンスファムになったのですか?

 

 中学生の頃に福岡放送の深夜テレビで、洋楽の情報やプロモーションビデオをラジオ風に紹介する「ナイトジャック福岡」という音楽番組で「次は〜、〜発売のプリンスの新曲です」というMCに続いて流れた「ビートに抱かれて」(原題 When Doves Cry)を見てからです。ここからが始まりでして、まだ洋楽に知識も何にも偏見がないから、当時はたくさん聴くアーティストの1人、という感じでした。ちなみにパープル・レインをたまたま発売日にカセットで買ったのが最初のアルバムです。その時は、予約とか知らなかったので、予約特典のポスターが貰えなかったのでした。「予約したらポスターとか貰えるんだ!」って初めて知りました。以降は、洋楽新譜は必ず電話で予約するようになりました。

 

 

  同時期にVHSデッキにプロモーションビデオを録画したり、ラジオで録音したテープを聞いたり。その頃の楽しみの大半は洋楽でした。佐賀の田舎に住んでいたので、FMファンやFMステーション等の雑誌で情報を収集したりしてました。プリンスも年に新作を1枚出してくるので、プリンス摂取量も自然と増えていき、高校生になってDuran Duranの福岡でのLiveを体験して、「Liveの味」も知ることになりました。

 そしてついに高校卒業の年、『プリンスが福岡に来るらしい!行きたい!』でも、福岡といっても佐賀からは離れた北九州の戸畑(とばた)だし、戸畑って一体どこなんだ、って悩んでいたら・・・、ちょうど同級生のO君が車の免許を取得していてO君の親戚が戸畑だから遊びに行くと言ってたので、プリンスのLiveの日に合わせてもらって、無事に会場にたどり着くことができました。

 Lovesexy Tourの来日前にNHKBS放送でライヴが見られると知って、親に必死で頼んでBSチューナーとアンテナを買ってもらって、番組でしっかり予習してからのLiveでした。しかも、シーラEまで見られるし、ステージも大掛かりで、過去の曲もメドレーで演奏するからそれも楽しみで。もうすっかり暗くなった頃に、戸畑の北九州総合体育館に開演ギリギリに到着して、パンフ買って、在庫無くなってサイズ小さいT-シャツ買って、会場に入ると・・・。なんと、衛星放送で見た「円形ステージ」が、日本では真ん中ではなくて奥に寄せられていて「普通のステージ」になっていた!!!

 ライヴで思い出すのは、最初らへんに、プリンスが「今日のオーディエンスは・・・」とか言って、客席に向かって「右側は?」、「左側は?」、そして「真ん中は?」とスポット的に照明を僕ら客席に当てたのが、めちゃくちゃ興奮しました。スポットライトとかって、テレビの中の人が浴びるものですからね。初めてのプリンスのLive体験で、しかもショー的な要素満載で超興奮。それから僕とプリンスはプリンスが創作活動をすればするほど、一緒に育ってきたような気がします。彼は「絶対に興味を無くさせない人」だったから、自然と好きになってました。

 

3.  あなたの最も記憶に残る「紫の経験」は何ですか?

 

 もう英語でコミュニケーションも少しは大丈夫だし、いい歳だし海外でも行ってみるか!!!!ってことで、2002年ミネアポリスのペイズリーパークでの「セレブレーションの一週間」に参加しました。あのプリンスのペイズリーパークに行く。それは僕にとって初の海外旅行で天国と地獄に飛び込むような心境でした。想い出は書ききれないくらい、いろいろとありますけど・・・。

 

 

なんと2日目、ペイズリーパークのエアコンが故障、ゲストがシーラEの日。 プリンスのLive始まって、1回中断、猛暑の中で、みんないったんスタジオの駐車場に移動。ちょっと待たされで演奏再開して・・・それでもやっぱり空調も不調で。

 そこでプリンスが「みんなごめん。映画を見に行こう。トム・クルーズのマイノリティリポートを。」その一言で、世界中から集まった全員のファムがそれそれ映画館に移動。プリンスが映画館を貸し切って、代金も全てプリンスのおごり。「へぇぇぇぇ!映画、タダで見られるんだぁ!」と思いながら、お腹がすいた僕は館内のポップコーン売り場に行ったら・・・プリンスが。

「あれっ!?」

「ちょっと、プリンスかも??」

と思ってもう一回見直すと

「やっぱプリンスじゃん」

なんで違和感があったのかと言うと、プリンスはヒールではなく、サンダル履いてて、背丈が“ステージ・バージョン”ではなかったから・・・。

  それとイベント3日目の夜明け前。Liveも終わり殆どの人も帰り、若干の人が会場をウロウロしてて、僕も会場の真ん中で余韻に浸っていたら、後方の水売り場がちょっと空気が変わったのがわかりました。プリンスが歩いてきたのです。

 「あっ、彼に触ってはいけない。目を合わせてはいけない。声をかけてはいけない。田舎で怖い野良犬と遭遇した感じ。いやいや、絶滅危惧種の野生動物を保護する感じかもです。よりによって、会場の端っこではなくて、ど真ん中を堂々と通ってやってきます。彼のスタジオだし、当たり前っちゃ当たり前なのですが。2人くらいに声かけしながら、明らかにプリンスが歩く導線上に僕がいるんですけど・・・。どんどん近づいて来る!いまさら知らないふりは出来ないし・・・、焦った、焦りました。

 思い切って「We Love U」と言ったら、彼は微笑んでくれた。プリンスは男だし、僕も日本人だし、これはもう脊髄反射レベルで、「I love U」は絶対に言えなかった。そんでもって、彼はプロレスラーでもないし、「握手してください」ってできないし・・・困りに困り果てた僕は、右手を空に挙げたら、プリンスはハイタッチしてくれた。精密に言うと、僕がダンクシュートした訳でもないし、緊張してアクションが大きくできないから、肩の少し上らへんで、挨拶風な低めのハイタッチをしました。そんな感じで僕はペイズリーパーク・スタジオでのプリンス体験を満喫しました。

 その年の後半のONAツアー福岡公演のステージ。プリンスが「今日は誰がステージに上がる?」って言い出して、ふと僕の前に立ち、僕を指名してきたので、「僕ですか?」って手を胸に当てて確認したら「そうだよ」って言うプリンス。「こうなったら日本人を捨ててでも、ステージを盛り上げなきゃ!」と思いつつも、ちょっと確信犯的に、すっと右手をプリンスに差し出したら・・・彼が引っ張り上げてくれました。僕は、ダンスっぽい動きで無我夢中で盛り上げて。友達に後で聞いたら、プリンスも横で踊っていて、「プリンス、僕、バンド」が、終わりを「ピタッ」とパーフェクトに合わせたのが凄かったそうだ。大切にしたい個人的な想い出です。

 

4. あなたのトップ3のソウル・ソング(重要曲)は何ですか?

 

Temptation

 

 プリンスの曲で初めて鳥肌ものだった。サックスの狂気、ギターの歪み、叩かれる鍵盤、プリンスの語り。なんか狭間に引き込まれます。なにも考えず感じるままに聴きたい曲です。再生したら頭の中にプリンスの世界が広がります。これって芸術もんです。個人的な感想ですけど、この曲の歌詞は後の映画の核になっていると思っています。

 

Savior

 

 Emancipationのアルバムはliveで表現してもらいたかったなぁ、と思うのですが。この曲はもう賛美歌というか、土臭いゴスペル。なぜか解らないけど、聴けば救われそうな曲だと思います。このアルバムを制作したときには、幸せだったんだろうなぁ、しかし発売したときには、子供の夭逝でアルバム制作時の気持ちとは、違ったんだろうなぁ、そんな気がしてなりません。2002年のセレブレーションでプリンスが、Soul Sanctuaryを歌ったときには、僕は泣きそうになりました。個人的にはEmancipationの2枚目は特に、後期のプリンスの楽曲の礎だと思います。そしてSaviorの声には解放が表現されているように感じます。

 

Better with time

 

普通に聴くと普通の曲に聞えます。でも良く良く聴くと、アレンジが非常に凝っている曲です。2013年に発表されたアルバム『Art Official Age』で「Art Official Cage」 が1曲目で、そのAgeとCageが歌詞に出てくるのが、Better with time 。それに気づいたときに驚きました。

 

5. 素晴らしいアーティスト/ミュージシャンをプリンスが私たちに紹介しました。あなたのお気に入りは誰ですか?

 

アルバム Around The World In A Day でプリンスが起用したエディMです。The Ladderの哀愁を漂わせる演奏とTemptationでの芸術的な演奏はプリンスの世界を立体化させてくれました。多彩なプレイスタイルをもっていて、例えばポーラ・アブドゥルのヒット曲「Forever Your Girl」のイントロ部分では、派手さはないけどキラキラとした名曲になるエッセンスとしてのサウンドになっているように思います。共演するアーティストに合わせて演奏スタイルを変られる器用さが、エディMだと僕は思っています。

 

 

 

初期のNPGのドラマー、マイケルBも素晴らしいです。彼のドラムは重たくて手数も多く素早くて。1990年のヌード ツアーでの冒頭のメドレーの安定感と重さはロックっぽくてシックのトニートンプソンを連想してしまうくらいの重量感を感じます。メドレーでのハウスクエイクの重さは圧巻ですね。バックとしてのドラムではなくて、プリンスと横並びのドラムと思わせるくらいで。プリンスが攻めたらドラムのマイケルBも攻める、スローになったらスローに徹する。プリンスの強弱と匠に同調できるアーティストだと思います。後に数多くのセッションドラマーとしても活躍していますね。

 

 

 

宇多田ヒカルのMTVアンプラグドLIVEで初めて目にしたジョン・ブラックウェル

後期のNPGのドラマーで、個人的な意見ですがNajeeとジョンが居たからアルバム『The Rainbow Children』の完成度が高くなったんだと思います。収録の「Everywhere」これは完コピで演奏する人が存在したら見てみたいくらいで。とにかく手数が多くて技巧派で素早くて、ハイハットで裏打ちするテクニックやスタイルは貴重だと思います。

 

 

 

6. プリンスの音楽は人生の教訓とメッセージでいっぱいでした。プリンスがあなたに与えた最も重要なものは何ですか?

 

 プリンスのライヴを見たくて衛星放送を導入し、ペイズリーバークに行きたくて海外旅行もして、プリンスがネットの分野に飛び込んだから、プリンスの活動を知る為にアップル買って、インターネットして、メールも覚えて、コンピューターを使えるようになって・・・。プリンスが楽曲をネット配信するから、僕もCDを焼いたりDVDを制作したりして、自然にいろいろとできるようになりました。プリンスを追いかけていたら、自分の出来ることが増えていったのです。そしてプリンスが居なかったらTrue Funk Soldierと出会わなかったと思います。最も重要なものはコレかも知れませんね。

 

7. 次世代にプリンスを紹介する方法は?

 

 何年か前、僕は、このままだったら新しい音楽を聞かずして、懐メロだけ過ごしてしまったら時間が止まってしまうかも、とちょっと心配になってしまって・・・。流行とか新しさとかを求めてDJイベントに行ったら、今の若い人は意外と昔の音楽に興味をもって聴いていたのに驚いた。彼らと交流していく中で、自然と若い世代からインプットすることも多いけど、僕から彼らにアウトプットできることも多い、と悟った。「プリンスの話もするけど、プリンス以外の話もする」それは、相手の興味をしっかり受け取って、話を広げたら少しだけ、こっそりとプリンス味を付け足したり。活動量も多かったプリンスは、残した作品も多いから、どこかでつながる。そしてやっぱり面白くないとね、話す人が面白くないとダメかも。だって面白い人の周りって人が自然と集まるから。プリンスは凄かったから、人生に何かを求めている人にはプリンスの偉業を話すといいのかなぁ。そんな風に思います。

 

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Masa_ch (@hara_masataka) | Twitter

食わず嫌い王子 04 山田 育子/ワークショップ・デザイナー

 

f:id:PurpleUniversity:20200426215642j:plainヨーロッパやアメリカでは「現代のモーツァルト」として高く評価されリスペクトされる一方、日本の一般層には「プリンス?誰それ?」状態。そんな時代に、究極のお節介企画、『食わす嫌い王子』。プリンスをあまり聴いていない方、存在自体知らない若い世代に、「殿下の音楽は届くのか?」実験的インタビューをここにお届けします。

 山田 育子/ワークショップ・デザイナー

yamadaikuko (@yamataikoku0224) | Twitter

ーーーこんにちは、紫大学です。この度は、無茶な企画にお付き合いくださり、誠にありがとうございます。まずは山田さんの自己紹介をよろしくお願いします。

 

山田:こんにちは。山田育子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、大学卒業後に大手電機メーカーに事務職として就職したのですが、そこでたまたまケニアジュネーブでの展示会のスタッフとして働いたことがきっかっけで、イベントの企画や実施に興味を持ち、イベント企画制作の会社に転職。その後ずっと新聞社主催のシンポジウムやフォーラムや企業の講演会の企画~実施までをやってきました。

 ところが、2011年に会社が突然解散になりまして(笑)。東日本大震災の影響もあってイベント業界は厳しい時期で、転職もままならず、また震災の影響でちょっと思うところもあってフリーランスになりました。

 

―――会社が解散、震災の影響も!

 

山田:そうなんです。今は会社員時代にやっていたようなイベントの企画制作もやってますが、その後一方的な情報提供のイベントだけでなく、双方向に対話する場づくりに興味を持ち、ワークショップなどの対話の場づくりも行っています。その他にも自分の働き方がフリーランスになってかなり変わったので、そこでの気づきを、同じミドル・シニア世代でキャリアに悩んでいる人に伝えたくて、キャリアコンサルタントの資格もとって、ミドル・シニア世代のかキャリア開発や支援などの活動も行っています

 

―――予期せぬハードシップを経験されて自ら「場をつくる」ご活動、そして支援もされているわけですね。ご自身の気づきを悩んでいる方々の問題解決の一助とされているのも、素晴らしいと感じました。何かご趣味であったり、好きなことはございますか?

 

山田:ありがとうございます。みなさんそうだと思いますが、今はなかなか厳しい状況にあるので、そのように言っていただけると勇気づけられます。趣味というと本当に私はつまらないやつでして(笑)、趣味と言えるものがないのです。まあ続けていることというと、「気功」ですかね。20年以上やっているので。好きなことは、やっぱり人に出会ってお話することですね。ご縁をいただいて、こうして今インタビューを受けている。人との出会いでいろんなきっかけや気づき、そして知らない世界への扉が開かれるというのがいちばん好きなことかなぁ。

 

ーーー20年以上続けているものがある、というのが凄いですし、出逢い、ご縁を大切にしているというのも、素敵なことですね。この企画は、プリンスをそこまで聴く機会がなかった方に、ちょっとした「あなたのプリンス」を紹介してみよう、という、かなりおせっかいなプロジェクトなのですが、その前に、山田さんが現在お持ちのプリンスのイメージなどがありましたらぜひ教えてください。

 

山田:そうですね。ものすごい強烈な個性を持ったアーティストというイメージですね。独特のファッションセンスとなんとも怪しい感じ。陰と陽でいうと陰な感じ。。かな。

 

ーーーなるほど、強烈な個性、独特、陰・・・まさにある意味でその通りかも(笑)ではでは、早速1曲目を選んでみたいと思います。こんな感じの曲がいいとか、ジャンルやタイプであったりとか、イメージとか、何でもいいので教えていただければ嬉しいです。

 

山田:では曲の希望ですが、新型コロナウイルスのことで緊急事態宣言も出て、あらゆる活動がダメージを受けています。こんな時だから、希望を感じる曲をお願いします。

 

ーーーでは、女性シンガー、マルティカとプリンスが共作した Love...Thy Will Be Done をご紹介します。

 

 

 

山田:ご紹介いただいた曲、何度も聴いてみました。私は聴きながら歌詞の意味がわかるほどの英語力はないのですが、「希望を感じられる曲」というリクエストでこの曲を紹介されたという前提で聴いているからでしょうか? なんかこのリズムに身をゆだねていると、救いがやってくるような・・・そんな感覚を感じました。

 

ーーー何度も聴いてくださり、ありがとうございます。山田さんのヒストリーを知り、さらに世の中や個人が絶望に打ちひしがれているとき、僕も少しだけ「希望」について考えてみたんです。彼は「希望」という概念をどんな形で表したんだろう?と。いろんなメタファーがあるんですが、彼はこの曲で「光」と表しました。

「愛、あなたの御心のままに。もう私は隠れたりしない。もう逃げたりもしない。私を守る光を拒むことはもうできない。その光は私に戦い続ける力を与えてくれる。」

これがこの曲の歌詞、主題のメッセージです。 

 

山田:わー、すごい歌詞ですね!最初の「愛、あなたの御心のままにもう私は隠れたりしない。もう逃げたりはしない。」のところは、何度も繰り返されるフレーズで、なんとなく意味は伝わってきていました。それでこの曲を通じてずっと刻まれているリズムに体をゆだねると、なんか救いが来るみたいな感覚になっていたかなぁと思いました。

 

―――救いが来る。

 

山田:はい。それと、ずっとこの曲を聴きながら感じていたのは、キリスト教のイメージだったんです。それはご紹介いただいた動画の中で、ちらっとマリア様の像が映るので、それに影響されたのか?と思っていたのですが、「御心のままに」とか「光」という訳をみて、ああやっぱり、と思いました。「私を守る光を拒むことはもうできない。その光は私に戦い続ける力を与えてくれる。」のところは、今このコロナと戦っている人類にそれこそ光を与えてくれるような。人間の知恵、人間の生きる力を信じて、心を一つにして戦いづつける。そんな力を与えてくれる詩ですね。いろんな言葉の訳をつけて「がんばろう!人類」みたいなプロジェクトをつくって、このメッセージを流したいと感じました。

 

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ーーーこの収録は4月21日から約1週間かけて、新型コロナの影響が拡大していく真っただ中で、メッセージのやりとりで記録されています。奇しくもこの日は彼の命日でもあって、「生きる」という主題を突きつけられているような状況です。そんな時に、山田さんから「希望のリクエスト」があったこと、そして1曲目にして「人間の生きる力を信じて」という言葉にハッとしました。

 

山田:ありがとうございます。

 

―――山田さんは、お仕事やご活動の中で、数多くの人々に関わられると思うのですが、「希望」とか「信じる」って「希望をもちなさい、信じなさい」って言われて「はいわかりました」ってなるような簡単な話じゃないじゃないですか。そのあたり、現実場面でどのようにそのあたりのことを共有していらっしゃいますか?

 

山田:うーん。やっぱり、希望を失わずに行動している人とか、信念を持っている人の活動を伝えることでしょうか? おっしゃるように「希望をもちなさい。信じなさい」と言っても伝わらないですから。先ほど、私の経歴について、2011年、震災の年に会社が解散になって、思うところがあってフリーランスになった。とお話しましたが、もちろん、その年はイベント業界にとって今と同じように厳しい年で転職が厳しかったということもあるのですが、あのような未曾有の被害にあっても、助け合おうとしたり、支援に行っている人に感謝の気持ちを伝えている東北の人々をみて、それで逆に勇気をもらったというか、希望をもらったようなところがありました。やっぱりそういう姿をみる・知ることで心が動くような気がします。

 私はイベントとかワークショップを通じて、伝えることをしているので、そういうステキな人の生きざまとか、ユニークな考え・視点を伝えて、そこに参加した人が、何か新しい視点や気づきを得て、パッと顔が明るくなったら幸せです。

 

ーーーたいへん興味深いお話です。震災というハードシップの中にあって、助け合う、支援する、感謝する。言葉にすれば1行で終わりますが、その行動とその影響のようなものが、「勇気」や「希望」として他者の中に芽生える、というわけですね!そして山田さんご自身が、そういう激流の中で見つけた何かが、今のご活動に繋がっている。それは本当に素晴らしいことですね!

 

山田:ありがとうございます。そうですね。やはり言葉だけでなく、その方の行動や考え方が周囲に影響を与えるのではないかなと思います。

 

ーーー先ほど、山田さんが聴いてくださった、Love Thy Will Be Doneは1991年にマルティカのセカンドアルバムからのシングルとして発表されたのですが、プリンスはあの曲を1995年から96年、元プリンスとしてハードシップの真っただ中の時期に、ステージで演奏するんです。

 

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山田:ハードシップの真っただ中、に。

 

―――そうなんです。「所属レーベルとのトラブル」と言われがちなのですが、「音楽の所有権は誰にあるのか?」「音楽を商品としてだけ取り扱う業界はそれでいいのか?』「自由のための音楽なのにオレは今自由じゃないじゃないか!」そんな状況下にあって、名前も読めないマークに解明して、右の頬にわざわざ「SLAVE」(奴隷)と書いて活動していたんです。

 

山田:SLAVE!

 

―――震災のような直接的な生命の危険はないかも知れませんが、巨大なレコーディング・スタジオ、自身の独立レーベル、数多くのスタッフを抱える責任者として、レーベルとの闘争はスタッフとその家族も巻き込む死活問題だったわけで、そんな時、もっとも「希望の光」が必要だったのは彼自身だったと思うんです。先程の山田さんのエピソードから、プリンスの特質というのでしょうか、暗闇であったり、激流の中での希望。そういった彼のテーマ性を、改めて再認識しています。

 

山田:そうですか。そんな時期の曲だったんですね。頬に奴隷と書いて活動していたとは、なんか本当に痛みが伝わりますね・・・。レコーディングスタジオ、レーベルとスタッフを抱える責任者として、スタッフの家族も抱えて死活問題だったというのは、今、なんか自分事のように苦しい気持ちになります。私も個人事業主ですから、今のような状況下、仕事が飛んだら収入0なので・・・。特に表現者・アーティストであり、スタッフを抱えるリーダーでありというところのバランスは大変だったでしょうね・・・。そんな中、希望を見出だそうとしたこの曲で、Love Thy will be done 愛 御心のままに と歌うのは、本当に祈りの歌のように届きます。

 

ーーーお話を伺いながら、平時はもちろん、非常時や困難なときこそ、希望、祈り、信じる、といったものが我々人間に必要なんだな、感じています。では2曲目にいってみたいと思います。どのような曲がいいでしょうか?

 

山田:ご紹介いたただいた曲は、すっかり私にとって祈りと希望の曲になり、家に閉じこもってちょっと不安に駆られるときに繰り返し聴いております。さて、2曲目ですが、祈り~希望ときたら、『再生』。生きる力を感じるようなものをお願いします。ビートの効いたかっこいい感じのものを、よろしくお願いいたします。

 

―――では、こちらはいかがでしょう?I'm yoursです。

 

 

山田:この曲知らなかったですけど、自分が10代とか?に聴きまくっていたロックっぽいテイストで懐かしい感じがしました。ギターのリフとか、ね。中学生の時に当時好きだったギタリストのリフを口真似して(自分はギター弾けないんで)友達と遊んでいたことを思い出したりして(笑)。アー思い出すだけでも恥ずかしい。でも若い時にバカみたいなことで熱中していた時のあの感覚を思い起こすと細胞が若返る気がする。まさに「再生」ですね!

 

ーーーおおお、そのご感想にこちらがびっくりしています。全くのノーヒントでこの曲を選ばせていただいたのですが、これ19歳に時に発表された曲なんです。デビューアルバムのラストに収録されてるんですが、10代の若々しさ、みずみずしさ、そして「これからやっていくぞ」の決意が山田さんの10代の記憶と握手したのかも!

 

山田:わー、なるほど!

 

―――ちなみにこの曲、全ての演奏を10代のプリンスひとりでやってるんですよ。鳴ってる音も、録音も、プロデュースも、全部プリンス。オール殿下(笑)

 

山田:オール殿下(笑)。19歳の時にすべての演奏を一人で・・・。しかも録音~プロデュースまで。それはすごい!!本当に天才ですね。いろんな分野をそれぞれ極めちゃう人の頭の使い方ってどうなってるんんでしょう?自分は単細胞でめちゃくちゃ不器用なので、ご教示いただきたいです(笑)。でも既にこれだけ完成度の高いものをつくっているとはいえ、なんかやっぱりすごくフレッシュ!というか若い!って感じはしますね~。ういういしいです。しかし、まさかギターのリフを口真似してギャーギャー騒いていたおバカな中学生時代をここで思い出すとは(赤面)。音楽って不思議ですね。

 

ーーーあははは、完璧な中学時代を誇る大人にあったことがありません(笑)プリンスが少年時代、「仕事しないとな」って思って電話帳を拡げたらしいんです。そしたらやりたい仕事がひとつもなかった。その時に、「オレは音楽で勝ってやる」って決めたんだそうです。

 

山田:音楽で勝ってやる!いいなぁ。

 

―――これ、すごく不思議なんですけどね、アメリカの五大湖ってあるでしょう?あの周辺から、全く同学年の3人がライバルだったんです。マイケル・ジャクソン、マドンナ、そしてプリンス。3人とも常軌を逸脱したレベルの超負けず嫌いで。それぞれ交流をもちながらも、「あの二人には負けねーぞ」ってのはあったみたいなんです!

 

山田:マイケルとマドンナとプリンス、凄すぎる。3人が「負けねーぞ!」のエネルギーを噴出させたら、なんか宇宙まで吹っ飛ばされそうです(笑)。同時代のめぐりあわせみたいなものも、人生にすごく影響を与えるものなんですね。

 

 

 

 

ーーーほんとですね!あの頃はMTVでどれだけの回数オンエアされるか?が勝負でしたからね。みんな歌って、踊って、演技して。山田さん仰るように、ライバルに恵まれる、さらにいえば、ライバルとして意識できる、って大切ですよね。そういえば、今の日本では、「ライバルつくれ」とか「ライバルが自分を伸ばしてくれる」みたいなこと、スポーツなどの領域以外ではあんまり聞かないような気がするんですが・・・。

 

山田:そうですね。あまり「ライバルをつくれ」とか「ライバルが自分を伸ばしてくれる」というような言葉はあまり聞かないですね。私は中学・高校は「ハイキング部」(笑)だったし、いわゆる体育会のりのところとは無縁だったこともあって、自分自身もそういうことを言われたり、ましてや自分からそういう存在を見出そうとしたことがないんです。でも、身近にそういう「負けねーぞ」と思う対象がいると、もっている能力をぐーっと伸ばせる気がしますね。

 唯一、私が10年以上勤めて、震災の時に解散になったときの会社に、同年代で自分とはまったく違うタイプの仕事のできる女性がいました。あまりにタイプが違うので(笑)、お互いに距離を置いていたけど、お互いの存在は意識はしていたかもしれません。その彼女とは震災の時に、帰る方向が一緒だったので、二人で何時間もかけて歩いて励ましあいながら帰宅しました。その時、「私も彼女も互いに認めあってたんだなー」と感じました。そういう存在はまた親友というのとも違うけど、かけがえのない存在ですよね。だから、ライバルってとても素敵なんだなと思いました。私はスポーツとも無縁で、女子高でぬるま湯のような世界で育ってきてしまったので、他人と切磋琢磨するようなことをちょっと避けてきてしまったようなところがあるんですが、そこはもっとやれたらよかったなぁ。

 

ーーーわぁ、震災の時、励まし合いながら会話して、互いに認めあってたってわかったって、なんか素敵ですね。その光景が目に浮かんでくるようです。なんだろう、なんかライバルとか、勝負という言葉が、日本では「競いあい」の意味でしか捉えられていない気がするんですが、山田さんの仰る切磋琢磨、つまり磨き合いであったり、高め合いであったりは、あとになってから「自分を形づくる重要な要素」だとわかるのかも知れないですね。

 

山田:磨き合い、高め合い。なるほど。プリンスたちもそれを見せてくれた。

 

―――僕はそう思います。マイケル・ジャクソンが亡くなったとき、プリンスは「これで本当のダンスが失われた」と呟いたそうで、その後にステージでマイケルの曲を演奏するようになるんです。でも自分では歌わないで、ほとんど女性ボーカルに歌わせるんですけど。「俺はマイケルのようには歌えないよ」ってことなのかな?

 プリンスが亡くなったときは、マドンナは「プリンスは世界を変えた。真のビジョンがあった。」とコメントしていて。「ああ、この人たちはそれぞれの才能と存在を磨き合ったんだな」って思ったんです。

 

山田:そうなんですね。マイケルとマドンナとプリンス、互いにリスペクトしていたんですね。足をひっぱりあうのではなく、互いの才能と存在を磨きあっていた。ステキですねえ。いいな~。そういう関係性。私も今回こうして問いを投げかけられることで、ライバルというか、身近で頑張っている存在が、自分の眠っている可能性を呼び起こしてくれたり、エンジンを回し続けて前に進むことを後押ししてくれたりするものだな。と気づきました。

 

―――ありがとうございます。3人の素敵なライバル・トライアングルのお話から、かなり強引に3曲目にもっていきます(笑)どんな感じにいたしましょう?

 

山田:3曲目はTakkiさんにとっての忘れられないプリンスの曲をお願いします。

 

ーーーありがとうございます、忘れられない曲はいろいろあるのですが、The Crossを選んでみました。

 

 

山田:ありがとうございます。拝聴しました。The Crossというタイトルからして、なんか宗教っぽいんメッセージがあるのかな?と思いましたが、それよりなにより、めちゃくちゃかっこよかったです!女性のドラマーもすっごくかっこよかった!こんな、エネルギーの爆発みたいなステージ観たらノックアウトされそうです。

 

ーーー観てくださりありがとうございます!「サイン・オブ・ザ・タイムズ」というライブ映画のラスト曲を選んでみました。プリンスという人は、「観客はレコードを聴いてコンサートにくるんだから、コンサートはレコードを超えなきゃ意味がない」という信念をもっていて、アルバムはライブのサウンド・トラックぐらいの位置づけなんですね。

 だから、「プリンスすげー!すげー!」ってウザいくらい言ってる僕らみたいなリアルタイム世代の人たちの多くは、彼のライブを経験しているんです。山田さんの仰る「エネルギーの爆発」を全身に浴びて五感で受け取ってしまっている。

 

山田:いやー、ライブ観てみたかったです。殿下のエネルギーの爆発を全身で浴びてみたかった!ライブはやっぱり伝わるものが違いますよね・・・。実は私もこのコロナの影響で家にこもるようになってから、ミュージシャンのライブ映像をよく視るようになりました。やっぱり無意識に、ミュージシャンとオーディエンスのエネルギー交換をどこかで欲してるんですよね~。ライブ映像をみていると、音楽だけじゃなくて、ミュージシャンの表情、オーディエンスの表情がどんどん輝いていくのがわかって、それが何かこちらにエネルギーをくれるんです。

 

ーーーなるほど、表情が輝いていく。大きなパワーが生まれる瞬間を映像でも受け取れる、今、こうして共有できるのも素敵なことですね。

 

山田:なぜこの曲が忘れられない曲なのか、ぜひ理由を知りたいです。

 

―――僕がこの曲を選んだ理由は、そのメッセージにあります。

「真っ暗な日、嵐の夜。愛も希望もどこにも見つからない。だが泣くのはやめよう、彼はやってくる。死んではいけない、十字架を知る前に」

 これ、十字架という言葉だけだと、たしかにイエス・キリストだったり、宗教的な感じを受けると思うのですが、ずっとずっと聴いてきて、ある時ふと気がついたんです。「ザ・クロス」とは「生きる意味」であったり、「ミッション」であったり、「心から信じられる何か」なんじゃないか?と。十字架は「キリストの象徴」であるばかりではなく、「愛、神、信仰、祈り」など人が生きていくために大切なものをシンボライズしてる面があると思っていて。

 

山田:生きていくために大切なもの。

 

―――はい、生きていれば、思い通りにいかないこととか、希望が見出せないこととか、全部ギブアップしたほうが楽なんじゃないかとか、まあ、いろいろありますよね。この曲では「我々はみんな問題を抱えている。小さなものから大きなものまで。だが、いずれそれら問題は去っていくだろう、十字架によって」って歌われていて。それに気づいてから、自分にとっての「ザ・クロスって何?」と意識するようになったんです。

 

山田:ありがとうございます。

「真っ暗な日、嵐の夜。愛も希望もどこにも見つからない。だが泣くのはやめよう、彼はやってくる。死んではいけない、十字架を知る前に」

 今この状況下でこのメッセージはヤバいですね・・・。もう一度このメッセージを意識して曲を聴いてみたら、なんか涙が出ました・・・。今はどうしても、新型コロナの脅威の環境下での自分の感情と、なんでも結びけてしまう自分がいます。

 なんとなく「死んではいけない。一人ひとりが一生をかけて取り組む大事なミッションをもっているのだから」と言われているようで、ぎゅーっと胸が締めつけられました。そして、この曲が静かなメロディーから次第にどんどんエネルギーを増していく感じが、「必ずこの状況下に打ち勝つ!」という力を与えてくれるような気がしました。かなりの勝手な自分の解釈ですが。Takkiさんにとっての「ザ・クロス」は何なのでしょうか? 私は人生をかけて大事にしたいことがある人が本当に幸せなのではないか? と思っています。

 

ーーー山田さんの言葉を通じて、1987年に発表された曲が、今、コロナの状況下で力強いメッセージソングとして機能する、時空を超えて力を与える、という事実に僕も驚いています。僕のザ・クロスは、、、あえて言葉にすると、「ポジティヴィティ」を伝えること、かな。これもプリンスが1988年に突きつけた命題なんですけど(笑)、15歳の時に「ポジティヴィティ」という曲を聴いて、ずっとそれについて考え続けているんです。なので、僕は僕の活動や作品を通じて、「ポジィティブであること」を問いかけたいなと思っています。単に前向きとかじゃなくて、自分の中のネガティヴな面をしっかり捉えつつ、少しでもポジティヴでありたい。といっても、なかなかできていないんですが(笑)。それが僕のザ・クロスですね。

 

山田:TakkiさんのThe Crossはポジティビティを伝えることなんですね。それは素晴らしいです。私もツイートのメッセージにすごく元気をもらっています。

 

―――ありがとうございます。ここまで、3曲を聴いていただいただけでなく、非常に興味深い対話をさせていただきました。かなり強引な企画であることは自覚しているのですが、率直なところいかがでしたか?

 

山田:今回、この企画にお誘いいただいたときは、プリンスの曲はいわゆるメジャーなヒット曲ぐらいしか知らないのですが、曲の感じとか存在感とかはすごく好きなほうだったのでお受けしたのですが、まさか曲を通じてこんなに自分を内省することになるとは思いませんでした。

 震災の時になぜ自分は独立の道を選んだのか。ずっとその存在は意識していたけど、あえて距離を置いていたライバルのような存在との絆、ギターのフレーズを口真似して友達とキャーキャー言っていたアホな中学時代。そして今このコロナの状況下での自分の気持ち。

 殿下の曲を通じて語り合うことで、一気に自分の歩みと、今の自分と、そしてこれからの自分に想いを馳せるような、深く内省するとても貴重な時間を過ごすことができました。

 

ーーーこちらこそ、究極のお節介企画、しかも無茶ぶり連続の数日間にお付き合いいただき、ありがたいやら、申し訳ないやらです。こうやって3曲を聴きながら対話を重ねることで、山田さんと同じように、僕自身も新たな発見がたくさんありました。

 ザ・クロスの「十字架を知るまで、死ぬな!」のメッセージも、Love Thy Will Be Doneの「光」も、このような絶望時にこそ真意がハッキリと理解出来たり、高め合うライバルが時を経て「戦友だった」と気づいたり、I‘m Yoursの10代の若き衝動の大切さだったり。これらは、楽曲だけを聴いていてはおそらく得られなかった気がするのです。山田さんというひとりの女性のヒストリーの中で得られた発見です。

 

山田:それは私にとっても嬉しいです。

 

―――プリンスの楽曲は「人生のサウンドトラック」、つまり「人生のあらゆる局面のあらゆる感情に寄り添う音楽」として意図された部分があるように思っていて、今回の対話がその典型例なんじゃないか。そんな感覚を得ることができました。これも山田さんのおかげです。ありがとうございました!

 

山田:こちらこそ、心から感謝申し上げます。ここで対談がいったん終わるのが寂しいくらいです。楽しかったし、自分を見つめたり、ふりかえったりする素晴らしい機会になりました。ありがとうございました!

 

 山田育子

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