The Beautiful Ones プリンス回顧録

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陰と陽の天才。

音楽は聴こえるが、目には見えない。

彼は音楽に「発音できない形」を与えた。

それが「ラヴシンボル」だ。

あの形を目にすれば、脳内で彼の音楽が再生される。

 

これは彼が挑んだラストアルバム。

コンセプトは「ミスター・ネルソンをプリンスが語る」。

彼は我々を「音の無い音楽体験」に誘う。

言葉の陰に「隠された音」が聴こえてくる。

 

未完成かも知れないが、

「それって、永遠に終わらないってことだろ?」

彼ならそんなセリフを言いそうだ。

 

FOR YOUから始まった優しき眼差しは、

心の眼サードアイで「美しき人々」を見守り続ける。

 

――Takki/二重作 拓也

 

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プリンスの自伝が出るーそんなニュースが伝わり、日本版も出版されることとなった。

  幸運にも、同時に、恐れ多くも・・・推薦の言葉を述べさせていただく機会を頂戴した。大変有難いことであり、相当なプレッシャーでもある。

  いうまでもなく僕はプリンスを尊敬している。崇拝(Adore)に近いかも知れない。これまでの人生で、幾度となく彼の芸術に魂を救ってもらったから。だが、一方でこのようにも意識している。僕のプリンス愛が、彼を邪魔してはならいない、と。

 プリンスの音楽は、支持者の心にまで届いた。彼の楽曲はどんな解釈も許したし、発表した以上、全てを聴くものに委ねた。だがしかし、そこに「彼の想い」はあったはずだ。パープルにしても、ビキニパンツにしても、ハトにしても、ヌードにしても、グラフィティにしても、彼なりの「そうした理由」が多少なりともあったはずだ。

 それらは彼の楽曲を組み合わせたり、ツアーパンフやステージでの表現、発言などを手掛かりに解明作業を行う以外にないのだが、それも簡単なことではない。

 

「僕の音楽について全て理解しているのはーーーー僕だけだ」

 

 2005年、インタビューでそのように語っている。まるで古代遺跡のような、答えが永遠に解明されることのない現代音楽家だった。心にリーチする彼の音楽は、「私のプリンス」、ともすれば「私だけのプリンス」を生みやすい。それはそれで素敵なことだが、僕はあくまでパブリックな場面では、極力「僕のプリンス」と「プリンス」を意識的にわけてきたつもりだ。

 彼が57年の生涯をかけて戦ってきた相手のひとつが「人々の偏見」である。「プリンス」を語る際は、「僕の」を遠くの倉庫にしまって、つまりは僕の偏った見方を極力排除して、あくまでの客観的な立ち位置から俯瞰して語る必要があった。そう、「宇宙の壮大さを語る天文学者の立ち位置」を決して忘れないこと。その距離感こそが僕なりの彼への敬意の表れだと自負している。

 

 僕はこの回顧録に、上のような推薦文を寄稿させていただいた。拝読させていただいた原稿には57歳にして戦い続けるチャレンジャーがいた。80年代のメディアを巻き込んだド派手さが無いだけで、彼の「精神の革命家」としての感覚は歳を重ねるごとに洗練されていったのがわかる。若き頃に比べて人格者になったものの、不正に対する嗅覚の鋭さと戦いを辞さぬ強さは、全く衰えることはなかった。

 

我らがプリンスは、2016年もワン・アンド・オンリーのプリンスだったのだ。

 

 くり返すが、本書は「音の無いラストアルバム」である。回顧録という名前がついてはいるが、12インチシングルにオリジナルの楽曲を収録し、ホログラムのジャケットを導入し、CDケースの上にシンボルをプリントさせ、新聞にアルバムを付録でつけ、映画をズタズタにサンプリングして音楽にぶち込み、授賞式を新曲披露の機会に変えてしまうような男だ。自伝を書いたところで「いわゆる普通の回顧録」になるはずがない。

 

 世に認識されている「プリンス=音楽家」というイコールは決して正しいとは言えず、映画監督であり、プロデューサーであり、ビジネスマンであり、戦略家であり、ヴィジョナリーであり、人種差別反対の活動家であり、支援家だったプリンスが、2016年に彼にとっての「適切な表現」として書という形態を選んだに過ぎない。彼にとっても新しく、世の中にとっても新しい。それが本書の正体である。それぞれの「私のプリンス」「僕のプリンス」を尊重しつつも、「ミスター・ネルソン」がつくった「プリンス」が、「人間ミスター・ネルソン」について真摯に語る。アート・オフィシャル・エイジ、そしてヒットエンドランphase 1で突然登場した「ミスターネルソン」がコンセプトになったのだ。

 

そこに特定の音楽は必要ないーー彼の判断は今回も正しかった。

 

読み進めれば、キミが愛する楽曲が浮かんでくるだろう?

あるいはキミが今聴きたい曲を流しながら読めばいいさ。

彼の求めた「自由」が言外のメッセージとして静かに伝わってくる。

 

1987年にリリースされたシングル「サイン・オブ・ザ・タイムズ」の映像を見て欲しい。彼の影響を受けた支持者であれば、ボリュームをゼロにしても、音楽が脳内に鳴り響き、身体が反応するはずだ。

  彼の「音楽の源流を探る旅」、それこそが最高にして最新の形の音楽体験。

プリンスは物語の続きを「Beloved、Rainbow Children、またはTrue Funk Soldiers、あるいはNPGMCと彼が呼んだ戦士たち=The Beautiful Ones」に託したのかも知れない。

 

The Beautiful Ones

編著 ダン・パイペンブリング
翻訳 押野素子

日本版 発売元 DU BOOKS

推薦文 KID氏、TUNA氏、松尾潔氏、吉岡正晴氏 Takki それぞれに違ったプリンス体験がここにある。孤高の天才の多様性に満ちたレコメンドもお楽しみください。

https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK267

 

プリンス回顧録Twitter記事

https://twitter.com/takuyafutaesaku/status/1249249803634008065

 

NPG Prince Site

https://npg-net.com/2019-12-05-2/

 

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Takki@プリンスの言葉  https://twitter.com/takuyafutaesaku

 (文・構成 Takki)